第17話 ネットカフェはSF

 ゴールデンウィーク最終日。珍しく門河かどかわ一家が家族一緒に出掛けることになった。

 軽自動車に家族4人全員が乗り、目指すは町の中心部にあるとある店だった。

 繁盛しているのか店前の第1駐車場は満車で、そこから離れた位置にある第2駐車場に停めるしかなかった。


「へぇ。第2駐車場に停めないといけないなんて繁盛してるんだなぁ」

「まぁな。ゴールデンウイークだと特に混むからなこういう所は」


 ゴールデンウイークに特に混む場所。となると何かのレジャー施設だろうか?

 行き先を聞かされていない竜一りゅういちはどういう施設なのか憶測するしかなかった。




 店内に入ると、まるでシャレたホテルのラウンジのような高級感漂う造りをしており、受付らしき場所のそばには大量のマンガや雑誌が陳列されていた。


「なぁ竜二りゅうじ、一体ここは何屋なんだ? マンガや雑誌が置いてあるんだけど書店じゃないよね?」

「ここはネットカフェだよ。まぁ兄貴には分からないだろうなぁ。

 昔はインターネット環境を整えるのが難しくて、それでもネットの環境が欲しい人向けに時間単位で貸していた施設だよ。今は家族層を狙うようになったんだけどな」

「ネットカフェ、ねぇ。今ではスマホで当たり前のようにネットに接続できる環境があるのに使う人なんているのか?」


 スマホにすっかり慣れた竜一は自宅では実質使い放題なネット環境の中、わざわざカネを払ってまでネットカフェに来る必要はあるのか? と懐疑的だった。


「それがいるんだよ。ネットも有料のコンテンツが見放題だし、カラオケだって歌い放題だから家族が気軽に外出できる場所になってるんだよ。

 昔のネットカフェも知ってるけど当時は野郎御用達だったからなぁ。今ではずいぶんと様変わりしてるよ」

「!! ええ!? カラオケまで歌い放題なのか!? でも別料金でお金かかるんじゃないのか?」

「大丈夫だよ。カラオケも利用料金の中に入っているし、それにドリンクバーでドリンク飲み放題だし、何だったらソフトクリームまで食べ放題なんだ」

「!? な、何ぃ!? ドリンク飲み放題な上にソフトクリームまで食べ放題!? 何だそれ!? そんなことまでやって経営成り立つのか!? スゲェじゃねえか!」


 あまりにも大盤振る舞いなサービスに竜一は驚きを隠せない。大抵のファミレスではドリンクバーは別料金で有料だというのにそれがタダ!?

 しかもソフトクリームまで食べ放題!? 彼にとってはかなりの衝撃だ。


「それにマンガも読み放題だから家族そろって休日に出かけるにはちょうどいい場所なのさ」

「へーそうなんだ。いやぁドリンクバーやソフトクリームまでついてるなんて大盤振る舞いだなぁ、それにマンガも見放題と来た。ここだけで1日中遊べるな」

「だろ? だからこうやって俺たち家族そろって出かけに来たんだよ。

 特にコロナウイルスで有名な観光地に行くのにためらうときには、こういう場所って重宝するんだぜ?

 とりあえず3時間ほど滞在するから好きにやってくれ。俺はカラオケルームで咲夜さくやとカラオケしてるからな」

「あいよー分かったそうするわ」


 竜一は弟夫婦と別れて今回利用する部屋へと竜也たつやと一緒に向かった。

 ついた先はファミリールームと呼ばれる、4人家族が入っても余裕があるほど広い部屋だった。




 さて3時間ほど何をしようか? 竜一は考えてすぐ思いついたのは受付近くにある大量のマンガや雑誌。せっかくの機会だし読んでみるかとオススメを探し始めた。


「とりあえずマンガでも読むか。えっとオススメは「呪術大戦」に「迫撃の巨人」にあとは……」


 竜一はスマホでおすすめのマンガを紹介するサイトをザッピングして何を読むのかを決めている最中だ。


「なぁ竜也、読みたいマンガがあるなら一緒に持ってくるけど何か読みたいのはあるか?」

「ああ、俺はマンガ読まないから伯父おじさんが好きな本だけでいいよ」


 竜也はそう言いながら受付でもらった「ある物」を取り出している最中だった。

 ここで竜一は現代テクノロジーの結晶ともいえる、想像を絶するようなとんでもないことを体験することになる。

 何せ「これがあるだけでも30年昔の世界からきた元は取れる」と断言してもいいほどの、衝撃的な内容だった。




【次回予告】

 ネットカフェを利用し始めて少し、竜也は受付から渡されたお目当てのモノを部屋の中の機器につないでいた。

 それは竜一にとって今まで経験した事がない、これだけのために30年後の未来へとやって来ても元が取れるという、

 人類の英知の結晶とでも言えるとんでもないものだった。


 第18話 「VRバーチャ・リアリティはSF」

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