大通り、凸凹会話

「ちょっと花守さん。待って下さい」


大通りにて大柄な男が、花守と呼ばれた女性を追いかける。


そして女性に追いつくやいなや、男は不思議そうな顔をして女性に問いかける。


「あの男、本当に脅してでも止めた方が良かったんじゃ無いでしょうか」


「矢嶋。全ての人間に救いの手を差し伸べようとするのは、ただのエゴです。それに貴方は彼の身を案じるのではなく、単純に警察の領分を侵されたく無いと言う考えのもとで、彼を止めようとしているでしょう。あまり褒められたものではありませんよ」


花守は特に興味もなさそうに、歩きながら返答した。


矢嶋はそんな花守に対して、感心した様に目を見開く。


「成る程、この胸のムカつきはその考えから来ていたのですね。花守さんに言われて初めて分かりました」


無表情だった花守は呆れた様な、それでいて手のかかる子供を見つけたかの様な表情を浮かべる。


「自分の感情位は、理解してコントロール出来る様にしておきなさい」


「す、すいません。それに、さっきもすいませんでした。足音は完全に消していたはずなんですが」


「それに関しては気にしなくて良いです。どっちみちバレてましたよ」


「え?なんでですか?」


「だって私、車で待っていた時に彼と目が合いましたもの」


矢嶋は先程自分の感情を指摘された時より、さらに目を見開く。


「あ、有り得ません。1km以上は離れていたはずです!我々も双眼鏡を使って、路地裏の入り口が、やっと確認できる程度だったんですよ?あんな胡散臭い男が、そんな距離まで警戒出来ている筈がないですよ!」


熱くなる矢嶋に対し、花守は冷静に言葉を返す。


「あなたは、まず相手を冷静に分析出来る様に努力した方が良いかもしれませんね」

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