断(章)/double

手のひらは朱に染まっている・・・


燃えるような朱色。目の前には同じ色の池が広がる。


その池の真ん中には嫌いなアイツがいて、少し幸せな気分。いい気味だと思う。

周りは騒然としていて・・・蔑むような、それでいてどこか恐れも含んだような口調で聞こえてくる、

『切り裂き魔』 

        という言葉。


 伏せていた顏を上げると、辺りの人間の視線は私に向けられていて、その時ようやくその言葉は自分に向けられているのだと気づいた。


そんなはずは無い。嫌いではあるが、ここまでするなんてあり得ない。


そんな者ではないと否定しようにも、私には・・・記憶というものが欠如していた。

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