第4話 おもしれー女
我が愛しのシャロンに向かって、憎きリチャードが悪態をついている。
「お前、邪魔なんだよ」
「そ、そんなこと言わなくても……」
「ああ、なんだってぇ!? 俺に口答えか!? お前、どこのどいつだ? 俺の親父にチクるぞ!!」
リチャードは金持ちの家に生まれ、甘やかされ続けてきた。
だから平然と他人を見下し、自分が悪いことをしても絶対に謝らない。
まさに漫画通りの展開だった。
「ふざけんなあああああ!! このクズ男があっ!!」
そんなリチャードの言動が許せる訳もなく、私はドロップキックを華麗にキメていた。
「どぶえええええええええっ!!」
無様な声を上げながら、地面を物凄い勢いで転がる。
あんなに格好つけていた癖に、制服が土埃だらけになっている。
「あっ、やっちゃった」
シャロンの盾になろうとしただけだったのに、あまりにもリチャードへの怒りが溜まり過ぎて、思わず実力行使してしまった。
他の人達はまさかの光景にあんぐりと口を開いて、何もできずにいた。
シャロンも顔面蒼白のまま私を凝視している。
きっと、助けた私に感謝して言葉も出ないに違いない。
「だ、誰だ……」
「私の名前はリリーよ」
「名前を聴いたわけじゃない。お前は何様のつもりかって意味で聞いたんだ。正気か、お前?」
「私はあんたの敵よ。それ以上でもそれ以下でもないわ」
指を差して断定してやった。
最終回の展開にムカムカした鬱憤が少しだけ晴れる。
「お前、この俺にこんなことしてタダで済むと思うなよ……。俺の親父に言ったら、お前みたいな奴いくらでも消せるんだ」
「だまらっしゃい!!」
孔明みたいな言い方で激怒する。
その口上、読み飽きたわ。
親父、親父。
二言目にはその言葉で周りがビビると思っている。
現実世界の一般家庭だった私だったら平伏していたかもしれないが、こちらは悪役令嬢。
権力を持った私に死角はない。
「自分の親をチラつかせて、それで言う事を聞かせて恥ずかしくないの!? それで私が言う事を聞いても、それはあんたの力じゃない!! あんたの父親が凄いだけ!! あんたはすごくないの!!」
「な、なにぃ!?」
「自分の欲望を叶えたいならね、権力を笠に着るんじゃなくて自分の力でかかってきなさい!! 尤も、あんたなんかの力じゃ、いつでもあたしが捩じ伏せてあげるけどね!!」
私はどさくさに紛れてシャロンの手を握る。
「行きましょう、シャロン」
「え、で、でも……」
オロオロとするシャロンに構わず連れて行く。
こんな所に置いていてら、リチャードのアホが伝染する。
そんな私達が去る姿を見て、
「おもしれー女」
リチャードは格好つけたように笑っていた。
うーん。
気持ち悪い。
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