第19話 第十七章 企画提案書をどの出版社に送るか

ここで大切なことは、企画提案書を送る先の出版社と、原稿の内容、読者の評価がマッチしているか? という点です。

 少し時間がかかりますが、インターネットで『一般社団法人 日本書籍出版協会』のページを参照してみてください。

 ここには2021年7月31日現在の協会に加盟している出版社、計394社のHPを網羅しています。各社それぞれに特色あるHPになっていますが、これらを参照することで、その出版社が世に出している書籍の一部を見ることが出来ます。

 大手や有名な出版社が並んでいます。一方で聞いたこともないような出版社に接することもあるでしょう。専門書を扱う出版社は、概ねその筋の方々にしか知られていません。

 これらを参照しながら、自分の原稿は度の出版社に合っているのかを考察できます。

 但し、企画提案書を送る出版社の選別には、頭で一発考えるようにしましょう。貴方の原稿によく似た書籍αを出版しているA社があるとします。このA社に貴方の原稿を売り込んだとして、A社は食指を動かすでしょうか。

 興味を持つかもしれませんし、全くつれないかもしれません。無責任に聞こえるかもしれませんが、私が出版社の立場なら、同じような原稿を違う著者で出版しようとは思いません。

 では、貴方の原稿とはジャンルも購入する対象者も正反対の出版社Bに送ってみるのはどうでしょう。結論を言えば、これも徒労に終わるでしょう。何が言いたいかと言うと、出版社は、自社のカラーに合う、且つ、これまでとは若干毛色の違う、平たく言えば常に新しい素材としての原稿を求めています。

 同じようなものばかり出版する愚は冒しません。とは言え、突拍子もなくかけ離れた内容の原稿は論外です。

 では、ここでの企画提案書を送る出版社の選別と選択は、何を基準にすればいいでしょう。

 彼らの職場を想像してみましょう。がやがやと騒がしい職場に違いありません。編集や校正といった現業の場面ではなく、原稿を採用するかどうかを議論している…、そうですね、企画会議が行われているとします。

 本の出版は、それがどのような原稿であれ、前述のように出版するとなれば予算をつけ、お金を掛けることになるのは明白です。

 であるならば、その原稿を採用し、出版に至らせるならば、社内で多くの原稿の候補を挙げ、企画会議で幾つかに絞り、更に上位の会議、例えば経営者レベルの決定会議に諮ることでしょう。

 これらを勝ち抜いた原稿だけが、紙の本になってその出版社から刊行されるのです。何にせよ、お金を使い、更には書かれている内容に責任を持たなければならないのですから、内容的にリスクの高い原稿は敬遠されるでしょう。

 しかし、出版社とて厳しい競争にされている業界です。なにがしかのリスクを採らなければ、ビジネスは前に進みません。一言で言うならば、出版社は新刊の発行のたびに、大なり小なり賭けに出ているのです

 書き手はここまでのことを考える必要は無いのでしょう。私が言いたいのは、この超えてはならないリスクのハードル、そのすれすれの所が、経営者レベルにとっては魅力的な領域であり、出版社によって傾向が少しづつ違う…、ということです。

 あまり褒められたことではないでしょうが、法律すれすれは、うまみが大きいとはよく聞く言葉です。私たちがどの出版社に原稿を売り込むか。その選択の基準にこれを持ち込んでみてはどうでしょうか。

 具体的に言えば、その出版社が出している本とは少し毛色が違う路線で原稿を売り込む。私たちの視点からすれば、

『ちょっと、ピッタリとは言い難いよなぁ…』

という先を探し出すのです。

 原稿を持っている私たち無名の作家は、大手の出版社や名の通った出版社からの出版を夢見ます。当然です。初版を自慢げに人に渡すときに出版してくれた会社が有名な会社なら、それだけで貴方の作家としての名前に箔が付くというものです。

 ですが身を弁えましょう。本にして出してくれる原稿は、どの出版社でも数十の内の中の数冊でしょう。出版社から契約金を添えて

『先生、こんな本を8万字以内で書いてください』

などと依頼が来るのは、ほんの一握りの、名の通った、出せば確実に売れる有名作家先生だけです。

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