第15話 第十三章 今度はPODだ

PODの出版手続き


 POD(プリント・オン・ディマンド)でアマゾンと業務提携しているのがインプレスR&DのNext Publishing 出版サービスです。

Next Publishing 出版サービス

https://nextpublishing.jp/author/

 まずはこのページを熟読してください。この時点であなたはKDPの出版申請を終えているはずです。

 ここからの流れは以下の通りです。

◇原稿のリフロー解除

◇ハイパーリンクの解除

◇サイズの決定。

◇原稿のテキスト・データのpdf.化

◇表紙の準備

◇価格の設定

◇電子書籍のASINでリンクを設定する

◇出版申請


 順を追って解説します。


原稿のリフロー解除

 PODは紙の本の出版です。表紙も文面のページもすべてpdf.でアップロードします。KDPでは『リフロー形式』で作りましたが、PODではリフローで作ると紙面の印刷の際に、章の終わりのすぐ後の行に次の章が来てしまいます。そのため、章の終わりに設定したページ区切りを解除します。


ハイパーリンクの解除

 KDPの原稿で設定した、ネットページへのハイパーリンクは解除しなければなりません。ご存知のようにワードの原稿である個所にハイパーリンクを設定すると、その箇所は文字の色が青色になります。

 このままでPODの出版申請を行うと、印刷データはpdf.なので、文字の色だけが反映し、実際に紙面には青色で印刷されます。しかし紙の本なので、そこからジャンプしてリンクの先に飛んでいくことはできません。

 紙の本でネットページを参照してもらいたい箇所には、検索順序を丁寧に解説する必要があります。この本をあなたが電子書籍で読んで頂いているのかPODの紙の本で呼んで頂いているのか私にはわかりませんが、ハイパーリンク設定の個所には、くどいくらいの説明がされていると思います。

 これは一つの原稿で両方を実現しようとした結果で、読者の方には読みづらい書き方になったのではないかと思います。

 ハイパーリンクの個所は、KDPとPODでは書き方を変えることをお勧めします。


サイズの決定

 KDPでは文字の大きさを10.5ポイントで原稿にしました。PODは、一枚のページをpdf.に変換します。ということはkindleの端末の様には読者が文字の大きさを変えることはできません。紙の本に印刷されているのですから当然ですね。

 自分の原稿が、A4から文庫本サイズまでの、どの大きさが適当であるのか、何度か手元のプリンターで印刷してみて検討してください。これは原稿の量の問題でもあります。原稿の内容が小説ならハードカバー・サイズか文庫本サイズが順当でしょう。

 私が書いた音楽評論誌は、作表を多数掲載したことと、書店だけでなく、楽器店で売られていた楽譜やバンドスコア集のようなイメージで、A4サイズの(衣の表紙、帯なしの)ペーパーバックにすることでそれらしさを表現しました。

 A4サイズは、本の大きさとしては大きいものです。なので文庫本の文字の大きさでびっしり書いてあるようでは読みづらくなります。その本の大きさに合わせて文字のポイントも変えていかなければなりません。A4サイズのペーパーバックなら文字の大きさは12ポイントが適当であろうと思います。

 PODの編集はKDPと違い、実際に手にもって本を読むときのイメージをもとに、その本の内容にあったサイズを決めなければなりません。KDPでは、前述のように内容の変更を伴う改訂が非常に楽です。驚くことに表紙デザインを変更することも半日でできます。

 しかし、PODはそうはいきません。出版申請時に登録した内容を変更しようとすると、有料になる場合があります。お手持ちのプリンターで何種類かのサイズをプリントアウトして、どのサイズのどの文字の大きさがいいのか、試行錯誤してください。

 紙代がかかるかもしれません。世に出ていく自分の本に、着物を着せる作業だと考えてください。


現行のテキスト・データのpdf.化

 KDPは電子書籍なので、ページ番号の表示と目次にそのページ番号が入ることは無意味であることを何度も触れました。

 しかし、ここで行うPODの出版申請は、紙の本の出版です。そのためここで必要な作業は2つあります。

 一つは、原稿の各ページにページ番号を振ります。ワードならば【挿入】タグを開いて【ページ番号】ボタンをクリックし、ページ番号を振ってください。この後に目次作成をしますが、この作業を先にやっておけば、目次には自動的にページ番号が表示されます。

 二つ目は目次の作成です。紙の本なので、本の冒頭、内扉や著作権表示の次に来ます。この個所にページを一枚増やします。

 【挿入】タグを開き、左端のグループから【空白のページ】をクリックします。次にこのページの冒頭にポインターを置いてクリック、位置を決めて今度は【参考資料】タグを開きます。

 KDPの目次作成と同じように左端の【目次】ボタンを押します。【ユーザー設定の目次】をクリックして出てきた窓のページ番号を表示するにチェックを入れます。目次の階層構造とレベル表示があっていることを確かめてください。

 これらを確かめたら、【OK】ボタンをクリックします。空白だったページから、多ければ数ページにわたって目次が挿入されます。(ページ番号は自動的に更新されます)

これらが終わったら、そのファイルをpdf.に変換します。ワードならば、左上の【ファイル】タグを開き、左端に並んでいるボタンの中の【エクスポート】ボタンを押します。

 するとエクスポートの画面に変わります。白抜きのボタン、【PDF/XPSの作成】ボタンをクリックすると、指定した場所にpdf.ファイルが作成されます。


表紙の準備

 PODは紙の本なので、表紙は

◇表表紙

◇裏表紙

◇背表紙

の3つが必要です。Next Publishing 出版サービスでは、これは作家が作らなければなりません。表紙デザインを除けば、経験のない方はこの作業が一番悩まされると思います。

 その理由は、

◇pdf.で準備しなければならないこと

◇サイズ指定があること

◇裁ち落とし(たちおとし)のために、塗り足し(ぬりたし)が必要なこと

の3つです。ここで一般の方に縁遠いのは「裁ち落とし」と「塗足し」の二つです。

 紙の本であるPODは、製本という作業をしなければなりません。印刷されたページを順に重ねて、これを表紙―背表紙―裏表紙のつながった厚紙表紙で、全体をぐるりと囲って接着して本の形にします。

 その後、背表紙以外の三方の辺をきれいに切りそろえるために、裁ち落としをします。(断裁機で裁断して切り落とす)この時、裁ち落としをした後のサイズがA4やB5、新書判などの大きさになります。

 つまり裁ち落とし前は、それぞれ指定サイズよりも若干大きい(面積が広い)状態で本の形に接着されるのです。仮にA4サイズに仕上げるとすると、その後に切り落としてA4サイズにするため、裁ち落とし前の表紙(3種とも)はA4よりも上下左右とも若干大きなものでなければなりません。

 塗足しとは、この若干大きな部分の端まで色指定が入っていることを言います。パソコンの画面上にワードの新規文書を開きます。文書のサイズはA4です。このままでは塗り足しのサイズに足りません。


以下のページを開きます。

NextPublishing出版サービス

https://nextpublishing.jp/author/?gclid=EAIaIQobChMIlffV_sj95wIVT6SWCh2RtQ67EAAYASAAEgJfhfD_BwE#q_10


 このページを一番下まで降ろして、よくある質問(FAQ)グループにある【入稿データの形式は? 】のボタンをクリックします。その文中にある【ユーザーズガイド仕様書】をクリックします。すると別ウィンドウが開き、pdf.ファイルを参照できます。

 このpdf.をダウンロードされるといいと思います。このファイルのP.30に「裁ち落とし」と「塗り足し」の内容が説明されています。

 具体的には、A4サイズの本にしようとするならば、ワードの標準サイズに四辺とも3ミリを足したサイズにすればいいわけです。

 上の【レイアウト】のタブをクリックし、サイズのプルダウンメニューを下ろして、一番下の【その他の用紙サイズ】ボタンをクリックします。

 出てきた窓で、用紙のA4サイズはそのままに、縦横の長さをそれぞれ6mm足してください。これで塗り足しに必要なサイズになります。

 次に【デザイン】タグを開き、右側にあるページの色のプルダウンメニューを下ろします。ポインターを色のところに持っていくと、作業中の画面全体がその色に変わるのがわかると思います。

 好みの色を指定してください。この色が三枚の表紙で使われる背景色です。ここで白を選択しても、それは白色で塗られたことになり、塗り足しの要件はこれで満たされます。

 このファイルに3つの名前を付けて別々に保存します。

1.POD表表紙(おもて表紙)

2.POD裏表紙

3.POD背表紙

の3つです。

 私の経験からすると、三枚とも塗り足しで塗った背景色は同じ色がいいと思います。なので、保存のために付ける名前で、上記の3つを保存してください。

 次はこの表紙の台紙ともいえるファイルに、デザインされた画像を載せなくてはなりません。


PODの表紙デザイン

 このPODの表紙デザインはKDPの表紙のデザインと同じものにするべきです。次にあげるページは、私がKDPとPODの両方をリンクさせている本のページです。

『The Beatles 音源徹底分析 1』(アマゾンで八木彬夫で出てきます)

 このページをご覧いただくとわかると思いますが、このひとつのページでKDPの電子書籍とPODの紙の本が、リンクのボタン一つで切り替えて見ることが出来ます。

 お気づきになったと思います。私の電子書籍とPODの表紙は少し違います。これは実は意図的に、特にPODは背景色の枠の内側に、電子書籍の表紙のデザインを少し縮小して載せています。

 これには少し経緯があります。電子書籍のデザインを依頼したデザイナーが、PODでpdf.にしたときに自分のjpg.のデザインした画像が、同じになるかどうか、保証できないと伝えてきたのです。

 実に慎重で、プロらしい判断だと感じました。そこで私は、画像の生データを貰い、私の責任でPODの表紙を作ることを伝えたところ、快くこれに応じてくれたのです。

 この点を踏まえ、電子書籍では著者は八木彬夫ですが、もう一名イラスト作成者としてこのデザイナーの名前をページ上で挙げています。しかしPODではこれをしていません。

 これは実のところ、私のスキルでは、PODの表紙は電子書籍と同じにすることが出来なかったことが理由です。

 内訳を言うと次の通りです。前述の通り表表紙、裏表紙、背表紙のサイズをすべて同じに作り、かつ同じ背景色(私の例では薄いクリーム色)にして、その真ん中にデータの画像を置き、不自然にならない範囲で大きさを変えました。これは塗り足しの部分の余裕を考慮しての事でした。

 PODの表紙はかくも悩ましいものです。この本の読者の皆さんも、KDPの表紙をお願いするデザイナーに最初からPOD表紙のために画像の生データを貰えるようにお願いするといいと思います。表表紙は以上です。

 次に裏表紙についてお話します。裏表紙は画面上では確認できませんが、表紙と同じ背景色を塗り足したままです。裏表紙には右下の一定範囲にバーコードが印刷されるので、何も載せないのが無難です。つまり、裏表紙は、画像を載せる前の無地の表表紙と同じものです。

 次に背表紙です。本の背表紙は本のタイトル(メインタイトル)と、著者名が載ったり載らなかったりします。どちらでもいいと思います。これも無地の表紙と同じクリーム色を塗り足したままのページに、縦書きにしたタイトルをセンタリングした箇所に置いただけです。

 この一連のPODの表表紙、裏表紙、背表紙の作成は試行錯誤の繰り返しになると思います。ぜひ、このハードルを乗り越えてください。


価格の設定

 この作業は慎重に取り組んでください。何度も言いますが、紙の本は電子書籍と違って、質量のある物で作られます。紙、インク、そして印刷作業、製本作業を経て完成し、注文が入るたびに印刷して、これを注文した人の自宅や職場の届け先へ輸送します。これらすべてにコストがかかります。

 電子書籍も、データ量が一定以上サイズの物は、データ転送のコストを費用として印税から差し引きますが、実際のところこれは高いコストではありません。

 しかし、紙の本のコストは結構かかります。これらは価格にのせて回収するしかありません。

 ここで先ほどの私の本のページに戻っていただいて、この本の価格を見ていただいたうえで、他のいろんな本をネットサーフィンしてみてください。

 kindleストアで小説でもビジネス書でも何でも結構です。見ていただきたいのは、KDP電子書籍とPOD(オンディマンド)を含む紙の本の両方がリンクされている本のページです。

 それぞれの価格はどんな設定になっているでしょうか。実際のところ様々だと思います。同じ金額の本があります。両者のコストを考えると、電子書籍にPODと同じコストはかかりません。この金額設定は、これを購入する読者にはコストの違いは分からないかもしれません。しかし、読者に対して誠実であるかどうかと考えた時、首を捻らざるを得ません。

 同額ではないにしても、若干の差をつけている本もあります。知っておいていただきたいのは電子書籍は、個人が出版しているものばかりではありません。多くの出版社が既存の紙の本を電子書籍化して出版しています。

 先に既存の紙の本があって、その後に電子書籍にしているものもあると思います。当然その逆もあるでしょう。

 紙の本はPODは少数です。まだ普及が進んでいないからと思われます。しかし、どんな出版のパターンでも、紙の本よりも電子書籍の方が圧倒的にコストが少ないのは間違いありません。

 私はここで高額の価格設定をしている電子書籍を非難しているわけではありません。それぞれの出版人がそれぞれの理由で価格を決めているにすぎません。そしてこの本で私が述べてきたように、私たち個人で出版しようとする作家が、価格をどのように設定するかは、あくまで自己責任ということです。

 私のケースをお教えします。私は個人的な意見ですが、紙の本であるPODと電子書籍であるKDPを同じ内容で出しているので、コストを考慮する価格設定にしています。簡単に言えば、同額にすることは考えられませんでした。

 そこで、『同じ本である』ということを根底に、一冊ごとの私が受け取る印税をできるだけ両者を近づけることを基準にしました。

 はっきり言って、アマゾン渡りで価格のクレームをつけてくる方はまずいないでしょう。そんな方は買わなければいいからです。

 しかし、どちらにしようか迷っているケースに対して、それぞれの特徴を考えてもらい、その上で決めてもらうことが出来るようにしたのです。

 PODの申請画面は、価格は自分で入力し、自動計算であなたが受け取る印税額を表示してくれます。これで私がKDPの申請が終わっても、販売開始まで期間を置いてくださいと書いた理由がお判りでしょう。KDPは販売価格を何度でも変更できるからです。PODは、一度決定したら、変更は有料になります。

 あなたの本です。じっくりと考えて、ご自身の基準を作って、そして自信をもって読者に届けるんだと考えてください。


出版申請

 これらの準備を終えて、やっとPODの出版手続きです。

nextpublishing pod出版サービス

https://nextpublishing.jp/author/

のページを開きます。ページを下まで降ろして、よくある質問の上にある【新規登録する方はこちら】のボタンを押します。

 ここであなたのメールアドレスを求められます。このメルアドは出版申請で不都合が発生したときに、担当者とやり取りするためのものなので、普段使いの、本名がきちんと登録されたものを使ってください。

 その後の出版申請手続きは、KDPの登録を終えたあなたなら、スムーズに進んでいけるでしょう。一番の難関はやはり表紙の登録です。一度詰まってもへこむことが無いように、何度でもやり直してチャレンジしてください。


電子書籍のASINでリンクを設定する

 このKDPの電子書籍とのリンクは大変重要です。リンク申請(つまり出版申請です)してから反映されるまで、2週間程度かかることもありますので、じっくりと待ちましょう。


※POD出版の申請手続きは、予想以上に日数がかかるかもしれません。そのため、KDP出版と販売開始日を合わせるためには、一か月(できれば二か月)くらい余裕をもって設定しましょう。

 では、それまでの間は何をするのか。次の章でお答えします。

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