第4話 お出掛け①

「よく寝たなぁ」


 週末の土曜日。

 スマホのアラームを止めて起き上がる。

 休日はいつもより長く寝られるから好きだ。月曜日は仕事始めで少しテンションは下がるが……


 歯磨きしてから朝飯を食べ、テレビを観たり、スマホで色々と調べたりしてゆっくり過ごす。


「そういえば冷蔵庫の中に食材ほとんどなかったな」


 たまたま放送されている料理番組を見て、ふと思い出した。

 1人暮らしをしているので自炊はしている。料理が得意ってわけではないが、作るものの大半は男飯だ。女子ウケはしないだろうな。


 冷蔵庫の中を確認してからスマホに買うものをメモし、着替えて家を出る。

 歩いて徒歩10分の所にネオンモールという大型の商業施設がある。

 大きさは全国一で、食材、衣服、飲食、アミューズメントなどのショップが構えている。

 この家に引っ越してからはよく利用している。何でも揃っているため、老若男女問わず訪れているのもネオンモールの魅力の一つだろう。


 到着して1階にあるスーパーに向かったのだが、時間は11時を過ぎたあたり。

 人が多くごった返しており、会計を待つ客の列も長いし歩くスペースもあまりない。

 レジ打ちの皆さんがすごく忙しそうだ。


(これは少し時間を置いたほうが良さそうだな……パートの皆さん、ファイト!)


 心の中で応援して、近くのショップを回ることにした。


 本屋やアパレルショップ、靴屋等々を適当にぶらつき、有名チェーン店のスタンドバックスに入る。

 いくつか席は空いていたので最初に目に入ったカウンター席にカバンを置き、注文待ちの列に並ぶ。


 スタンドバックスは全国にチェーン展開しており、コーヒー、紅茶、パンを販売している。ドリンクも美味しいのだが、中でもパンは常に出来立てを提供することを心掛けているため、温かいパンを食べられることから人気でリピーターが多い。僕もスタンドに来たときはよくパンを注文する。

 ちなみにスタンドバックスのことをみんな略して「スタンド」と呼ばれている。


「いただきます」


 カウンターに座り注文したカフェラテ、ベーグル2つ(メープルとストロベリー)をいただきながら窓の外を眺める。


(土曜日だから家族連れが一番多いな。子どもがお父さんお母さんと手を繋いでとても楽しそうだ。次いで友達同士で遊びに来たグループだろうか。男女で仲が良いなぁ……うん?後ろの2人が前を気にしながらこっそり手を繋いだ!?お互い顔が赤くなって恥ずかしいのかバレないか気にしてるのかな?甘酸っぱいなぁ……僕ってこんな親父くさいっけ?まだ22なのに)


 一度ため息をついて再度眺める。


(あとは僕みたいに1人で出掛けている人が少なからずいる感じかな。あの人も1人で出掛けてるし。それにしてもすごく綺麗な人……、あれ?)


 ミント色っぽいパンツにベージュのブラウスに白のストライプジャケット、白のトートバックを手に持ったモデルみたいな女性が右端から歩いてきている。みたいなというより、モデルと言っても違和感がない人は、会社の先輩の悠木さんだった。


 男性も女性も思わず振り返ってしまっている。特に男性達の目がとろんとしていた。気持ち悪い。

 あっ、頭叩かれてる。彼女さんなのかな?そりゃ怒るよ。


 女性の目線が僕のいるカフェの方に向いた。

 上を見てから目線を下ろし、窓に向けたところで、僕と目が合う。

 窓越しだったため僕は悠木さんに会釈する。

 すると悠木さんは驚き、そして笑顔になって近づいてきた。

 スタンドの入口から僕のいるカウンター席にやってきて、


「こんにちは、安田くん!」


 会社では見たことがない眩しすぎる笑顔で挨拶してきた。

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