第一話④ ストレスは便器を赤く染める
「という訳で、コーシにはあの二人と二股して欲しいのだ」
「ざっけんなゴルァァァッ!!!」
ようやく最初の神社っぽいとこに戻ってきた俺っち達だったが、おい待てあんなん聞いてねーっすよ。
片や惑星を焼き尽くせる程のガチもんの邪神。片や旦那に先立たれて未練たらたらな未亡人超越者。童貞に投げる案件じゃねーだろこれ。
「あんな奴らと二股とか、命がいくつあっても足りねーっすよッ!? ただでさえ下っ腹がさっきから変な感じがして」
そこまで言った時に、俺っちは急激な感覚に襲われたっす。下腹部から股下へと液体が突き抜けていくような感じ、つまりは尿意を。幸いにしてこの世界の水回りは、元の世界とあんまし変わってないのが救いっす。多分、動いてる原理はちげーんだろうけど。
「ふう、間に合っ……おおおおおおおおおおッ!?」
急いでトイレに向かった俺っちは、そこでも驚愕することになったっす。真っ白な便器を真っ赤に染めていく、俺っちの排泄物。つまり。
「血尿ォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!?」
血のションベン。生まれて初めてのその経験に、俺っちは絶叫した。股間のイチモツからとめどなく溢れ出てくる血液。止めようにも止まらないそれを、ひたすらに凝視することしかできなかったっす。
「あっ。それもお前の能力の内なのだ」
戻ってマツリにどういうことか問いただしに行ったら、あっけらかんとそう返されたっす。
「コーシの【
「つまり、今回の件については?」
「多分、ヤバいくらいにストレスが溜まってたから、それを圧縮して血尿という形で排出して、身体が治ろうとしてるのだ」
「俺っち今後血尿に悩まされながら二股しなきゃいけねーんすかァッ!?」
あんな邪神と超越者と二股し続けるとか、多分俺っちの精神が保たない。でもこの固有能力のお陰で、早々には最悪の事態にならないらしい……ん、ちょっと待って。
「ねぇこの能力ってさ。中途半端に倒れることができねーから、俺っちマジで無理が祟ってぶっ倒れるまで二股しなきゃいけないとか、そういうオチ?」
「
マツリはこっちをじーっと見た後。自分の頭にコツンっと手を置いて、舌をペロリと出した。
「今までのもまとめてごめーんね、なのだっ!」
「喰らえ俺っちの腕挫十字固ェェェッ!」
「痛い痛い痛い痛い腕がもげる腕がもげる関節がイケナイ方向に行こうとしてるって盛大に悲鳴を上げてるのだぁぁぁっ!?!?!?」
両手でマツリの右腕をとった状態で俺っちの両太腿の間にその腕を挟み込み、両足首は彼女の反対側の腕を挟むように固めて絡め上げてやったっす。てへっ、で許されると思うなよこのまな板。俺っちの数少ない趣味である格闘技観戦がまさかこんな形で役に立つとは。何でも勉強しておくもんなんすね。
つーか、んなことはどうだって良いっす。俺っちの今後って真っ暗じゃね? 邪神と超越者と二股しなきゃ死ぬし、二股がバレたら多分殺される。ストレスは血尿で流されるから、マジで限界点超えてぶっ倒れるまで途中棄権も許されねーとか。
「あ、あんまりだろこれェェェエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!」
拝啓、お袋様。チャラ男になって大学楽しんでくるっす、と言っていたあなたの息子は今、異世界に飛ばされてヤベー奴らと二股しなきゃ死ぬことになりました。あなたの顔を再び拝めることはできるのでしょうか? そもそも生きて元の世界に帰れるのでしょうか?
不安しかない俺っちのことを、どうか心配してください。世の中の理不尽に負けないように、応援してください。もうそれ以上は、何も望まねーんで……泣いてなんか、ねーっすからァッ!!!
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一方、その頃。コーシの母は実家にて。
「いやー、やっと馬鹿息子が家を出てってくれたわー。連絡がないのは元気の証。これからはゆっくりさせてもらおうかね。さってと、雑誌の続きを……おっ、占い特集じゃない。どれどれ……ウチのバカ息子に女難? ないない! 良い年して彼女も作ったことないアイツに女難って! あっはっはっはっはっ!」
居間でのんびりとくつろいでいた。
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