第5話 旅の誘い
野営地に戻り、寝床に着く。
結局夕食は、持ち合わせで済ませた。
おかげでティオは不機嫌だ。
「あの...」
銀髪の少女が勇気を振り絞ったように口を開いた。
「ん? どうしたの?」
それに、レグルスが優しく微笑む。
「ごめんなさい」
何度目かの謝罪。
少女も、自分がどれほど危険なことを冒したのか深く理解したようだった。
「気にしないで。君は何も悪くないよ」
少女の謝りに、レグルスはすぐに頭を横に振って答えた。
「それで、あの...」
少女は、口籠る。
だが、レグルスは少女が何を言わんとしているのかを察していた。
「安心して。急に君を放り出したりはしないよ」
レグルスはそう言って、少女の頭を撫でた。
少女は、目を細め安心したように撫でられる。
「僕は旅をしているんだ。世界各地いろんなとこをね。よかったら、君もそれについてきてくれないかい?」
「たび?」
「うん、そうだよ。旅はいいよ。いろんなものに触れられるし、いろんなものを知ることができる。そのことで君の記憶を取り戻す手掛かりになるかもしれないよ」
「...私、邪魔になりませんか?」
少女は目を潤ませる。
「まさか。旅は道連れっていうだろう? ティオとの2人旅は楽しいけど。君がいればもっと楽しいと思うんだ。それに、どうやらティオも君のことを気に入ったみたいなんだ。ねぇ、ティオ」
レグルスがそう言うと、頭だけテントに入れたティオが、ガオッと吠えた。
「私、旅したいですっ!」
少女は、いままでと違い元気に返事した。
「そうかい、それは良かった」
レグルスは嬉しそうに微笑んだ。
「それで、あの、レグルスさんは、魔法使いなんですか?」
「うん、そうだよ」
レグルスはどこか自慢気そう言うと、懐から杖を出す。
「光よ【ルクス】」
光球が宙に浮かび、少女を照らす。
「変化しろ【ムータティオ】」
そして、再び杖を振りそう唱えると、光球は変化し、ヘラジカの姿になった。
テントに、たくさんのヘラジカの影を落とす。
「すごいっ!」
少女はどこか興奮したようにそう言った。
「魔法に興味あるの?」
「え? 私も魔法使いになれるんですか?」
レグルスは少女の様子に思わず頬を綻ばせる。
「うん。君からは魔力が感じられるし、間違いなくなれるよ」
「本当っ⁉︎」
「よし、じゃあ、教えてあげよーか?」
「教えてほしいですっ!」
「はははっ、わかった。でも、今日は遅いから眠ろうか」
レグルスは光球を消した。
こうして、少女とレグルスの長い1日は終わりを告げた。
ルーナと魔法動物学者と星月の魔法 ぽぽぽぽーん @takumao3o
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