第2話 魔法動物学者
「では、改めて自己紹介しようか」
青年はそう前向置きして、彼女の前に座った。
「僕は魔法動物学者のレグルス・エイメ。魔法動物の研究のために世界各地を旅してるんだ」
「魔法動物学者ですか...?」
「うん、そうだよ。ドラゴンやフェアリー、ヒッポグリフやサーペント、河童や、レッドキャップ、他にも様々な多くの魔法動物たちのことをより深く知って、仲良くなりましょうって仕事なんだ」
青年レイグルはどこか楽しそうにそう言って、紹介を続ける。
「で、こっちが相棒で兄弟の黄金獅子【ライオネル】のティオだよ。ティオは僕が6歳のときから、19年間も一緒にいるんだ」
顔だけテントの中に入れたティオを、レグルスが紹介し、ティオはそれに合わせて、どこか誇らしげにガオッと吠えた。
「では、次に君のことを教えてくれるかな?」
レグルスは穏やかにそう問いかける。
それに少女は首を横に振って答える。
「...なにも、思い出せません。私が誰かも、なぜここにいるのかも」
「...そうかい。では、ちょっと失礼するよ。目をつぶって」
レグルスはそう言って少女の頭に手を置き、優しく彼女の頭を撫でた。少女はそれに安心したようにそっと目を閉じた。
レグルスは杖を軽く振る。
「思い出せ【メメント】」
白い霧のよう光が少女を包む。
「どう? 思い出せたかい?」
レグルスの問いかけに、少女は同じように首を横に振った。
「ダメか。どうやらこれは、記憶障害ではなく、忘却魔法をかけられているね」
「…ごめんなさい」
少女は悲しげに頭を伏せた。
「いやいや気にしないで、君は何も悪くないよ。こっちこそごめんね」
レグルスは少女の頭を再度優しく撫でた。
「忘却魔法は、記憶を忘れさせてしまう魔法。それでも、完全に忘れてしまうということは、魔法でも難しいこと。安心して、いずれきっとなにか思い出せるさ」
「...う、うん」
少女は力なく頷いた。
「ガウッ!」
ここで話を遮るようにティオが吠えた。
「はいはい、わかった、わかった、ごはんね」
レグルスは呆れたようにティオにそう言って、再度、少女に向き直った。
「それじゃあ、今から食べ物をとってくるからここで少し待っててね。すぐ戻るから。いくよ、ティオ」
「ガウッ!!」
レグルスはそう言い残して、テントを出た。
「あ、そうだ。念のために」
そして、思い出したように懐から杖を出して、テントに向かって呪文を唱える。
「守護しろ【プロテゴ】」
半透明の魔法障壁がテントを包む。
「秘密にしよう【セークレートゥム】」
そして、テントにもやがかかった。
「よし、これで大丈夫。それにここにはナイアドがいるから、他の魔物たちもあまり近づいては来ないだろう。行こうか、ティオ」
「ガウッ!」
レグルスとティオは、食べ物を探して移動を始めた。
※※※※※※※
「ティオ、そろそろ帰るよ」
「ガーウッ」
ティオは不貞腐れたように吠える。
「もう今日の分は充分だろ。女の子が待ってるから、早く帰らなきゃ」
「ガウッ」
レグルスの言葉にティオは泣く泣くの様子で頷いた。
そして、2人は再び野営地に戻る。
時間はあまり経ってはいないが、辺りは暗くなり、そして焚き火の炎も消えてしまっていた。
「やっぱり、今の時期の枝じゃ、長く持たないね」
レグルスはそう言いながら、再度、枝を組んだ。
「激しく燃えよ【ブレイズ】」
レグルスが杖を振り、そう唱えると今度は以前に増して強い炎ができた。
そして、少女の様子を確認しようと、テントの中を覗き込む。
「ただいま、戻ったよ。...て、あれ」
しかし、中を見渡せど、少女の姿はなかった。
「...ッ! これは行けない。夜の森は危険なのにっ!」
レグルスは慌てたように、ティオに尋ねる。
「ティオ、匂いは覚えてるかい?」
「ガウッ!!」
ティオもどれだけ危険か理解しているよにそう答えた。
「それじゃあ、2たてに別れよう」
「ガウッ!」
そして、レグルスとティオは、銀髪の少女を探すため、森の中を再度駆け出した。
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