Ⅵ. 帰星の時

 今日ほど、学校の授業や部活や帰り道の時間が長く感じられた事は無かった。


 私の帰宅を待ち切れなくて、セーライが先に帰星したのかも知れないと気がかりだった。

 

「今日も部活疲れたね~! なんか、星来、やけに早歩きしてない?」


 疲れてダラダラと歩きたい様子の映理が、解せない様子で尋ねて来た。


 そりゃあ、そうだよね。

 いつもなら、私の方が、よっぽどダラダラ歩きしている方なんだもの。


「うん、そうなの! ちょっと今日は用事有るから、先、帰るね~!」


「え~っ、また、それなの~?」


「ゴメンね~、映理!」


 ペコペコ頭を下げて謝りながら、手を振って、走り出した。

 部活で疲れたけど、今日だけは、そんなの気にしないで走れる!


 セーライに逢いたい!

 もう最後なんだもの!


 

「あら、お帰り、星来! 早かったわね~!」


 夕食を調理しているママに呼び止められた。

 映理とのダラダラおしゃべり歩きを引き上げて、走って帰って来たのに、ここで道草してられない!


「ご飯まで、あと30分くらいかかるけど、先にお風呂入る?」


「ううん、後からにする!」


 そんな事している間に、セーライがいなくなったら大変だもの!


「星来、お帰り」


 部屋に戻ると、セーライが笑顔で迎えてくれたけど、気のせいか、少し寂しそうな表情をしている。


 やっぱり、セーライも、私との別れが辛いのかも......

 そうだよね、友達としてだって、別れは辛いもの。

 そういう感覚って、宇宙人でも変わらないんだよね?


「良かった~、まだセーライがいて!」


「星来が戻る前にいなくならないって約束したから。星来、随分、急いで戻ったんだね」


「うん、最後なんだから少しでも長く、セーライといたいもの! 頑張って走り過ぎて、息切れしている」


 セーライは、こんな走らなくても、瞬時に移動できるから、苦しい思いしてまで走る気持ちって分からないかな?


「分かる気がするよ。僕も、少しでも長く星来といたいから」


「ホント? だったら、セーライ、また来てくれる?」


 そんな風にセーライも想ってくれるなら、また逢いに来て欲しい!


「星間研修は、地球へは1度だけって決まっているんだ。次回は、また僕の名前に似たクレリア星からの研修生が来るよ」


「似た名前......?」


 そういえば、セーライと私の名前似ている。


「僕が星来に出逢ったのは、似た名前の異性を友達に選ぶというミッションが有ったからなんだ。だから、次回、現れるのは、僕と似た名前の男性だよ」


「姿も、セーライに似ているの?」


「星来の心の中の理想形が、そのままだったら、同じ容姿をしているよ」


 そうなんだ!


 またセーライと同じ姿の似たような名前の人が来てくれるんだ!


 それなら、それで楽しみだけど......

 ただ、似ていても、セーライじゃないんだ...... 


 でも、ここは明るい笑顔で、セーライを見送らなきゃ!

 地球での思い出に陰りを見せたくない!


「さようなら、セーライ!」


 またね~!

 って言えるようなお別れが出来るなら、どんなにかいいのに!

 そう出来ないの分かってるから、せめて、この1週間の事を忘れないでね、セーライ。


「絶対に忘れたりしないよ!」


 ダメだ、私。

 私の心を読まれる状態に慣れ過ぎてしまってる。

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