Ⅱ. こんなにも好きになれる相手は......

 家に戻っても、両親は勤務中で留守で、誰からも


「お帰り」


 という響きは、聴こえて来ない。


 そう、私の部屋のドアを開けるまでは......


「お帰り、星来せいら


 その声が耳に届くだけで、学校の往復で疲れた私の体が回復する。

 

「ただいま、セーライ」


 セーライの姿を見るだけで、学校で受けたストレスも消失してしまう!


 その宇宙を思わせる、深い蒼い瞳には、私だけが映っている。

 この瞬間、私は、セーライの時間を独り占め出来ている!


 それがどんなに貴重な事なのか、私は、セーライを失った時に改めて気付かされる事になるのかも知れない。


「学校は、どうだった? 辛い事は無かった?」


 辛い事......?


 セーライの滞在期間中に、セーライをここに残して学校へ行くという行為自体が、今の私には、とてつもなく辛いのに!


 一秒、この一瞬たりとも、セーライと離れていたくない!


 セーライの地球での滞在期間は、わずか1週間だけ。

 もう既に、4日目だった。

 下校して帰宅した時点で、セーライと過ごせる時間は、もう半分も残っていない。


 地球への星間研修に来たセーライには、この1週間という期限で、地球人女性と友達になるという使命が有った。

 

 『友達作り』が、セーライのテーマなのに......

 私の方だけ、いつの間にか、友達なんて気持ちではいられなくなっていた。


「セーライと、ずっと一緒にいられないのが辛い......」


 今まで、同じ学校の男子に片想いとかした事は何度か有ったけど、彼氏がいた事も無ければ、1度だって告白した事なんか無かった。


 そんな私が、大好きなセーライ相手に、こんなにもスラスラと自分の気持ちを語れるわけは......


 そもそも、セーライは、私の心の内も一瞬にして見透かせる能力の持ち主。


 片想いしていた男子達とは違い、隠そうとしたところで、無駄足掻きになる。

 宇宙人相手に隠し切れるはずなど、到底無いのだから!


 それなら、回りくどい事はしないで、素直に自分の気持ちを認めて、それを伝えよう。

 たった1週間しか一緒にいられない相手に対して、ずっとこの先も一緒にいられるような地球人に対する態度と混同は出来ない。


 セーライは、そんな私の気持ちを受け入れて、優しく対応してくれる。


 ただし、それはたった1週間という限定期間だけ......

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