第10話 呼び出し
「何、チンタラやってんだ!!早く電話取れ!!!」
小さな事務所内に響き渡る上司からの怒声。
「は、、はい!すいません!、、お電話ありがとうございます!グレーファイナンスです」
上司からの怒声に萎縮しながら俺は、事務所に鳴り響く電話を慣れない動作で取る。
俺を救ってくれた強面の男の紹介で、小さな金融屋に勤める事になった。
強面の男は、名前を教えてくれなかった。
だから、名前は分からない。
分かるのは、俺の一生の恩人である事。
恩人に恩返しをする為に俺は、必死に頑張った。
「声がちいせええんじゃーー!!!」
電話が終わった俺の頭上によく飛んでくる上司からの怒声付きガラスの灰皿。
下手したら、これ。俺、死ぬんじゃないか?
少し前まで、高校3年生だった俺は、社会人ってやつはこんなに辛いんだと心の底から実感した。
家無き子の俺は、この仕事が終わると1人で事務所のソファで寝泊まりをした。
夜になって、皆、家に帰って行く。
事務所を出る先輩達を俺は、一人一人全力で頭を下げて「お疲れ様でした!!」と大声で見送る。
最後に俺の直属の上司をお見送りする際に、言われる。
「てめえ。もし、事務所の中のモノに何かあったら、死ぬより苦しい目に合わせるからな」
殺意しか感じない上司の圧にビビりながらも、「分かりました!お疲れ様です!」と全力でお見送りする。
事務所に見ず知らずの新人のクソガキの俺を寝泊まりさせる。
事務所には俺1人しかいないからいくらでも金目の物などに手を付けられる状態だからこその上司からの念押しだという意味だと理解したのは、勤務してから3ヶ月後だった。
最初は、ただ、怖かった。
勤務してから、3ヶ月が過ぎた。
直属の上司が俺を事務所の外の喫煙所に呼んだ。
こ、、殺される…!!
初めての呼び出しに、恐怖心に押しつぶされそうになった。
喫煙所に付き、上司は、タバコの火を付けた。
喫煙所という隔離された空間に2人きり。
俺の頭の中は、タバコの煙のように真っ白に宙に舞っていた。
可能性という名の悪魔 山羊 @yamahituzi
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