第8話 真っ暗


 ああ。俺は、宙を飛んでる。


少しづつ。ゆっくりと。落下していく。


目を開けたら。天国かな。地獄かな。分からないや。


ただ、目の前が真っ暗だ。


痛い…痛い…。


顔が痛い…腰が痛い…。


ん?電車に轢かれたんだよな


電車に轢かれた痛みってこんなんなの?


はは。思った以上に痛くないや。痛いけど。


あれ?おっさんが呼ぶ声が聞こえる?


おっさん?地獄に俺は落ちたのかな。


「おい!!起きろ!兄ちゃん」


俺を呼ぶドスの聞いた声が聞こえる。ゆっくりと目を開けた。真っ暗。少しづつ理解していく。倒れ込んでいた。黒いコンクリートにうつ伏せに倒れていた。顔を上げる。踏切が見えた。あれ?俺は、走る電車に飛び込んだはずじゃ…


両肩をゴツい手で掴まれて上体が起こされる。


「おお!起きたか!兄ちゃん!!」


俺の前にいたのは、ドスの聞いた声の主のおっさんだった。


え?どうゆう事だ?


一体、何が起きたんだ?


俺は、思考回路が回らなかった。


ただ、分かった事は一つだけ。


死ねなかったって事。


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