第7話 さよなら…クソッタレな人生


 人は、終わりが見えない環境下に身を置いた時に発狂する。

そう、心の底から実感した家出生活3日目。


あてもなくフラフラ歩き続けた。

兄を超えるために勉強に力を入れた学校生活。友達なんてものはいない。


家出初日は、お金もない。家出をした時に家に泊めてくれる友達もいない。

ただ、減っていく精神とスマホのバッテリー残量。


人生で初めて公園で野宿をした。4月の終わりだってのに寒い。家出をしたのが真冬じゃなくて良かったと感じた。

虫が顔に近寄ってくる。芝が横顔にかかってくる感触が気持ち悪い。せめてベンチで寝れば芝の気持ち悪さはなんとかなると思ったが既に先客がいた。


同い年ぐらいの男の子達が騒いでる声が聞こえてくる。

気づかれないように気配を消した。


家出2日目の朝。気持ち悪過ぎて早朝に目を覚まして、また、歩き始める。人生で一番早起きをした日だ。


目的もない。発狂しそう。時間帯が昼に近づくにすれ人は増えていく。

通りすがる人達が自分の悪口を言っていたような被害妄想に陥る。

目線が怖い。


2日目の夜も公園で野宿する。雨が降ってきた。冷たい。芝が気持ち悪い。

充電の無くなったスマホを雨に濡れさせて壊さないようにポケットに入れて、地面側にスマホを雨から守るように寝た。


おそらく、心の底から家出をした事を後悔していたのかもしれない。


家出3日目。行動は2日目と変わらない。早朝に起きて目的もなくふらふらと歩き続ける。


変わった点?精神が昨日よりも追い込まれてるのか、夢の中にいるかのような夢遊感で現実を生きている点。


夜になった。イートインスペースのあるコンビニを見つけた。

無意識に足がコンビニに向かってた。


コンビニ内にあるイートインスペースのコンセントに家出をする時に念の為に持って来ていたスマホの充電器を挿してスマホを充電する。

本当は、充電しないと家出をした際に決めていたはずなのに、精神は限界を迎えていた。


コンビニの店員が汚物を見るような目であれを見ていた。視線に怯えながら充電が溜まるのを待つ。

地獄のような長さの3分間だった。


スマホのバッテリーが溜まり、起動する。


期待していた。俺が3日間も家出をした事で、母親が心配して俺に何回も電話してきてるかもしれない。

もし、そうだったら、仕方ないから家出をやめて帰ってやろうかなと考えていた。

そう考えると同時に俺は、兄と同じで純粋なのかもしれないと感じる。


スマホが起動した。3日ぶりの通知が流れる。

俺は期待して通知を確認する。


不在着信 0件。


とら娘〜キューティダービー〜 イベント通知5件。


俺は、絶望した。

母親からの電話などこの家出してから3日間一度もなかったという事実に。

来ていた通知はスマホゲームアプリのイベント通知のみだという事実に。


俺という存在は、誰にも必要とされてない。


俺の中で何かが弾けた。


イートインスペースにスマホを置きぱなしにしてふらふらとコンビニを出た。


さっき、俺を汚物を見るような目で見ていたコンビニ店員が去る俺を呼ぶ声が聞こえたような気がしたが、何を言ってるのか分からなかった。


気がついたら、踏切の前に立っていた。


「カンカンカンカンカンカン」


踏切音が鳴り響く。俺は、踏切内に足を進める。

電車がもう少しで来るだろう。

俺の人生ももう少しで終わるだろう。


「さよなら…クソッタレな人生」


小声でそう呟いて、俺は、猛スピードで迫り来る電車に身を投げた。


「ドガッシャァァァッ!!!」


夜の踏切に、大きな音が鳴り響いた。


つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る