第43話 『L・R』拠点にて
レンたちが捕まった時点でのお話
シュウ視点
ギルドでキドさんと会ったのち、俺は『L・R』の拠点らしきところに連れていかれた。
どこかはわからん。魔法でぐっすりだったからな。拠点は一部の人間しか入れないらしく、その一部にはいない俺を連れてくるにあたって拠点の場所を特定されないことが必須条件だったらしい。
キドさんに連れられて拠点の一室に入る。
魔導書と空き瓶が部屋の三辺を埋め尽くす棚に所狭しと並び、床にまで浸食してしまっている。残りの一辺には祭壇のような形をした石のステージが備え付けられていた。当然窓は一つもなく天井に吊り下げられているアンティーク調のランタンのほのかな光がおぼろげに照らしているのみ。
「もう一度聞くが君は力が欲しいのじゃろ?」
食い入るようにうなずく。
「ああ、その力であのクソむかつくレンと、うちの愚王をやる」
「良い心意気じゃな。……まあ立ち話もこれくらいにして落ち着いて話すとするかの」
キドさんに促されるままに部屋の中央に置かれているソファに座る。ローテーブルをはさんで対面にキドさんが腰を下ろした。
「茶も出さずにすまないね。ここでは水も火も使えないのじゃよ。まあ、話はすぐに終わる。我慢してくれ」
「気にしなくていい。それで力っていうのは?」
はやる気持ちを抑えられず身を乗り出していた俺を両手を上げてなだめると、
「待て、待つのじゃ。いくつか確認がある。君は『L・R』に入って半年かそこらじゃろう?我々の理念は知っているかね?」
「もちろん。『優等種のみの社会を創る』だろ?」
満足げにうなずくキドさん。
半年前。俺がまだAランクだった頃、依頼帰りにギルドで一人で飲んでいるときに声をかけられた。酔っていたから話はおぼろげにしか頭に残っていないが、優秀な人間だから入らないか?資金援助をしてやると言われた。当時まだ十分な貯金もなかったから二つ返事で了承して、会員の証としてこの牙の紋様のブレスレットをもらった。
「君はこの理念に賛同し、遂行するためには身を投げる覚悟はあるかい?」
「当たり前だ。じゃなきゃこんな組織に入っているわけがない」
「ふむ……合格じゃな。話は終わりじゃ。そこのステージに立っておくれ」
言われるがままに素早く移動する。この人の命令に逆らえるわけないだろ?力がもらえるんだぜ?
ステージの中央に俺が立ったのを確認するとキド、いやこのお方は近くの棚から魔導書を引き抜くと俺に手渡した。
「では実験といくかの」
俺が聞こえるぎりぎりの声でそうつぶやくと魔導書を起動させた。
実験!?力がもらえるんじゃないのかよ!!
「てめえ俺をっ!!」
「身を投げる覚悟があるのじゃろう?文句は言わせんぞ」
邪悪と狂気がブレンドされた笑みを貼り付けてこのお方が呪文を唱えた。
「キドおおお!!貴様、マズハオマエヲッ!コロス!コロス!コロスウウウ!!」
俺の意識はそこで途切れている。
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