第40話 『L・R』
「建設的な話をしましょう。よろしいですね?」
ヴィイは全員を見渡して視線の同意を受け取ると続けた。
「まず私の身の上を話させていただきます。先ほども申し上げた通り私は『管理者』リヴァイアサンです。変身魔法を用いて人間社会に参加し、自然界と人間社会との共存方法について研究しております。変身魔法については『管理者』としての権能とでもお思いください」
なめらかな所作でヴィイはお辞儀をした。
「人間社会に溶け込むんだったらちっちゃい子のほうが大人が寄ってきて楽だよ~かわいいよ~って言ったのに。無視するのよ」
頬杖をつきながらヴィイを半眼でにらむシオン。
当の本人は素知らぬ顔で、いや少し軽蔑のこもった表情でにらみ返すと何事もなかったかのように、
「ここで一つ質問よろしいですか?」
なんか主と従者の立場逆になってないか?
「いいぞ。なんだ?」
軽くうなずいて先を促す。
「あなたはキド・Oについて何をご存じですか?」
「えっ?何って……」
キド・Oは俺らの依頼主でありおそらく彼女たちの依頼主でもあるだろう。それ以上もそれ以下もない。王立のギルドから依頼書を発行できているため身分もしっかりしているはずだ。
「ストレートに聞きすぎよ。レンさんが困っているじゃない」
視線を下げて考え込む俺を見とがめてヴィイをいさめる。
ヴィイは目を伏せて、
「回りくどいのは苦手なもので」
「そういうところが野生なのよ。思いやりは我が神が真人間に必要とされているものよ。レンさん、知っている限りでいいわ。」
まじめな口調に戻ったシオンからすっと助け舟を出される。
「いや知っていることといっても俺らの依頼主だってことしか知らないんだが」
俺が無知を告げた途端シオンとヴィイの顔が渋くなる。よくここまで何も知らずに来たわねって顔に書いてあるような気がするんだけど。
二人から漂ってくるただ事ではない雰囲気に背筋が伸びる。ついでに隣でのんきにあくびをしているルルの背中を小突いてまじめに聞けとサインを送っておいた。
俺らの視線が自分に集まったことを確認するように俺らを見ると、シオンの講義が始まった。
「キド・Oは新興宗教団体『L・R』のトップよ。掲げているのは『自然への回帰』。私たちにこの子達を預けたのもその活動の一環ね。普段はおとなしく我が国教に隷属していてくれたからさほどトラブルは起こさない団体だった」
「だった?」
語末に感じた違和感に首をかしげる。
「新種のモンスターになっていたのが『L・R』の団員なのよ。牙の紋様の腕輪を見たでしょう? それが団員の証。人間が突発的にモンスター化したとは考えにくいわ。彼らがなにか手掛かりを持っているかもしれないから調査の時は積極的に話しておいてちょうだい」
「牙の紋様のブレスレット、シュウもつけていたような……」
「あなたの国の筆頭冒険者ね。厄介なことに彼がこの国に来ることが預言でわかっています」
「預言?」
「あれ?知らなかったの? 私は預言者よ? だからこそこの国の首長なのだけど」
ただのロリコン首長だと思ってた……。
「ちょっと! なにその珍客を見るような目は! 私だってちゃんとすごいんだから! 敬いなさいよ!」
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