第41話 調査隊入隊

 シオンとの対談から数日後、言われるがままにナザレ近くのモンスター化の調査拠点に行くと、見知った顔が陳列されていた。


「よっ来たな」


「間に合ったようだな。早く席に着きたまえ」


 片手を上げて会の雰囲気にそぐわず軽い調子のヨハンさんと眉一つ動かさず書類に目を落としたままのジブラルさんの姿があった。

 そのほかにも冒険者然とした格好の人が数名。歴戦の猛者たちなんだろうな。


 ジブラルさんは顔を上げ俺らが席に着いたことを確認すると、


「全員そろったようだな。改めて口にする必要はないだろうが調査隊の指揮を執ることになったナザレギルドのマスターをしているジブラルだ」


 調査の内容としては俺らが倒した個体の解析、『L・R』の動向調査と街での聞き込み、初期発見地点周辺の捜査の3つ。

 俺らとヨハンさんは発見地点周辺の調査を任された。


 調査といってもモンスターの動向や、人の野宿の後などを調べるだけで学問的な何かがあるわけではない。

 ちなみに調査するにあたって制御できる範囲でルルの放し飼い?が許されている。




 重苦しい会議の後、会議室代わりにしていたテントを出る俺の背中に声がかかった。


「なあレン、俺の稽古に付き合ってくれないか?」


「え?俺とですか?」


 いやとかではないんだけど実力的に釣り合わなくないか?俺に稽古をつけてくれるならまだしもヨハンさんの稽古にはならないだろう。


 答えを渋っている俺を見かねたのかヨハンさんが誘った理由を語り始めた。


「いやな?あの人間もどきは俺一人では倒せない気がするんだよ。またレンの力を借りることになると思うから連携を確認したい」


「そういうことならいいですよ。他の人誘ってきますね」


 テントに戻ろうと踵を返した。


「いやその必要はない」


 じゃあどうやって連携はかんの?


「サシでやりあおうぜ。肌身で知ったほうが早い」


 あーそういう筋肉の会話を信じてる部類の人ね。


 拠点近くの開けた場所に移動し、向かい合う。

 手には木剣。『コンポスター』お手製だ。


 一つ深呼吸して両手で構える。

 相手は格上油断も隙もない。


 空気が張り詰められ、薄くなり今にも裂けそうになった瞬間、ヨハンさんが地面を蹴った。


 手のひらの内を締めて何とか袈裟切りを受け止める。

 肩までしびれるような一撃。


 自分の攻撃が受け止められたと見るや、ヨハンさんはにやりと笑い、こうささやいた。


「レン、お前に目標はあるか?」

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