第30話魔霧
「モ、モンスターだ!」
「なんでここに!?」
「何をしている!戦闘態勢!!」
今まで背景美術に徹していた全員が虚を突かれたようにそれぞれの武器を構えた。その視線は当然のようにルルを指している。
また追放されんのか……。俺らが冒険者として平穏に暮らせる場所は人間の国にはないのかもしれないな。
俺は現実逃避の中でそんな悲観的なことを考えていた。
『母さんはモンスターを守るために誇り高く死んだ!汝ら人間の乱獲!討伐!すべて汝らがいけないのだ!食料は事足りているだろう?なぜ我らを狩る?金か?名声か?我々の命は遊びでなくされるようなものではない!汝らは命を蹂躙し自然の摂理をあざけり、あまつさえ『管理者』までも侮った!』
怨嗟の雄叫びと共に放たれる魔素の奔流。『雷撃の槍』のやつらはとっくのとうに泡を吹いて倒れている。取り巻きの冒険者たちもまた体を動かせる者はいなかった。
ギルド職員たちも巻き添えになることが目に見えているのか降りてこない。
「ルルっ!!いいかげんに、しろっ!」
魔素に侵されてしびれている腕を気力だけで動かし半身を持ち上げる。さすがにルルを止めなければ死人が出る。
『我に触れるか人間!どこまで行っても見下すことしかできない連中だな!』
「ぐっ!」
ルルに触れようとした手が強引に弾き飛ばされる。骨が砕ける不快な音を立てながら床にたたきつけられた。
魔素は魔法を発動するための材料であると同時に過剰に摂取すると体を蝕む毒でもある。魔力が高ければ高いほどその許容量は増加するのだが、いかんせんルルの目の前にいるのはFランクの奴らだ。そう長くはもたないだろうな。
ちなみにシュウとの戦いで使った根源魔法は魔素の毒物の側面を悪用したものだ。
人形のようなぎこちない動きで見渡すと階段の上からのぞく職員と目が合った。
「そこ!!そうだ、そこの人!」
「な、なんでしょうか!?助けなら今呼んでます!」
「違う!待て!俺はレン・ガーベッジだ!上に俺宛の郵便きてないか?!」
「今そんなこと言っている場合ではないでしょう!?」
「いいから!!」
困惑した顔をしながらも二階の奥へ走っていった。
ルルはその間も悲壮な雄叫びを上げ続けていた。
ルルの視界から外れて階段の下まで這っていき待つこと数分、上が騒がしくなった。
「ありましたよ!!」
「下まで投げてくれ!頼む!」
「でも!あぶないですよ!?」
「早くしろっ!!」
階段を勢いよく転がり落ちてきたそれを抱え込むようにして受け止める。体から嫌な音が響いたけど気にしてられるか!
「頼むぞマテライト!」
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