第26話 断罪と再挑戦
*シュウ視点
「それでのこのこ担がれて帰ってきたというわけか」
乾いた笑いが張り詰めた空気の城内に響く。
レンのヤロウを運悪く逃がしてしまったのち、俺は憲兵に引きずられるようにしてヴォルガ城へ送られた。失敗したことを国王直々に説教されている。
お前から言われなくたっていいんだよ。ったく王都まで連れ戻しやがって。あいつがハザールに行ったところで俺には関係ないんだからそのまま追わせていればよかったんだよ。
国王の保身に走った説教を聞き流しながら、悪態をついてしまわないよう心を必死に押さえつけた。
内側から魔素でおかされたせいで両手、両足を動かすたびにくぎを刺されたような鋭い痛みが走る。
首筋にあてられている剣もだいぶぬるくなってきた。
一度取り逃がしただけで罪人扱いかよ。俺をなんだと思ってんだよ、お前の国が平和なのは俺のおかげだろうが。アースドラゴンだってワイバーンだってこの国を襲ったモンスターはことごとく俺が倒しているじゃねぇか。それで?一度底辺ヤロウを不運にも逃がしただけで犯罪者扱い?お前の辞書に恩の一文字は書いてねえのかよ。
「シュウ・アキルノ、だったか。ゴミ処理員を失ったことは我々の生活において多大の損失である。この国と王家のためにも早急に引き戻す必要がある」
要するに国王の勝手な許しによって俺にもう一度レンを追うことを命じるとのことだった。期間は3か月。それまでに連れ戻せなかった場合、どうなるかはわかってるな?とまでくぎ差してきやがった。
このくらいのことならいちいち王都まで戻された意味なくね?文書で伝えればいいじゃねえかよ。いちいちあんたの顔見なくたってこっちは最初から追う気持ちは固まってんだわ。今の状態だと魔法も使えなくなってるから余計めんどくさい。
しぶしぶ、礼儀正しく頭を下げて城を出たのち、俺はギルド本部に来ていた。
酒と魔物肉のむせるにおいもない品のある空間にすら金のにおいを感じて思わず顔がこわばる。
国境までの馬車の手配を済ませた後、国王の太った丸顔を忘れるために強い酒でも飲もうかとバーカウンターへ向かうと先客がいた。
「先生、お久しぶりです」
「おお、シュウ君。大変だったみたいじゃの」
先生の右腕には俺と同じ牙の紋様のブレスレットが光っている。
「しくじってしまいました。すいません」
「まあまあ一度しくじっただけでそんなに肩を落とすでない」
勢いよく酒をあおると、
「でも、でも!魔法が、俺の武器がつかえなくなってしまったんです……」
コップをカウンターに打ち付けて、うつむいた。
もう一度酒をあおる。顔がほてり、腹の底が熱く煮える感覚がしてきた。
「追いたいのに、魔法もなしに、どう追えばいいのか……」
「見るに、魔力が浸食されてしまっているようじゃな。仲間のよしみじゃ。我々『L・R』が援助するかの」
「ありがとうございます!先生!」
もはや俺は国王の顔もレンのヤロウの姿もなくただ目の前にいる先生の甘い言葉で満たされていた。
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