第23話 商人ギルド

 アリバが鉱夫との値切り合戦に勝利した後、俺らは今回の護衛の報酬をもらいに商人ギルドへ向かっていた。


「鉱石重すぎだろっ!腰がいかれる!」


 抱えた瞬間に腰とひざの骨が悲鳴を上げたときにには身の破滅を覚悟したな。


「そりゃあ鉱石ですからね。重いですよ。あ、ギルドで別の場所に宅配するサービスありますけど利用されます?」


「使わせてもらうのはありがたいんだけどさ、俺らのことカモにしようとしてない?」


「そんなことないですよぉ。送料は僕が払いますし。それはそうとギルドに加入すると今なら特典として入会費無料になりますけど加入します?」


「言ったそばからからかうな。ツッコミに体力使いたくない」


「えへへ、そんなことないですよぉ」


 そのにっこにこの顔が信用できない原因なんだよ。


「なあ、あそこの建物はいっていいか?肉のにおいがする!」


「ちょっ勝手に動くなって!!」


「にくを食べたいんだはなせぇ!!」


「飯の時間までがまんしろ、行くぞ」


「ううぅ、腹へった…」


 道のはじに並んでいる屋台に走っていこうとするルルの首根っこをつかんで引きずり戻した。


 ちょっとは休ませてくれないかな…。


「ギルドにおいしい食堂ありますよ。食べていきますか?」


「微妙に断りづらいのやめてくれ」




 商人ギルドは鉱石の直売所からものの数分のところに建物を構えていた。


「いやでかいな。何階建てだよこれ」


「四階建てですね。お金を持ってる成金たちが増築してこうなったそうですよ」


 よくみがかれた石と豪華な彫刻できらびやかに装飾された全体像を見上げる。建物から発散されている威圧とその堂々たる姿で中に入る前から圧倒されてしまった。


 ルルなんて見上げすぎて突然目の前にボスモンスターが現れたときみたいにひっくり返ってるし。


 弱らせたところに入り込んで商品を買わせようっていう商法なら悪質すぎるだろ。アリバに何か言われても買わないようにしよう。無駄遣いはできない。気をしっかり持たないと。


 それはそうと、同業者のことになると口悪すぎね?


「前々から思ってたんだけどさ、」


「はい?」


「商人のこと嫌いなの?」


「ストレートに聞いてきますねぇ」


 なんかそれルルにも言われたことあるな。回りくどいの苦手なんだよ。


「商人が嫌いっていうよりも金を持っていることを見せつけようとする輩が嫌いなんですよ、あいつらといったら…、もうこの話はやめて中に入りましょう。外で立ってても迷惑ですし」


「お、おう。そうするか」




「ほあぁ、太陽が増えておるぞ主、この世界が終わるのか?」


「縁起の悪いこと言うな。大丈夫だ、あれは太陽じゃない。ほら、いくぞ」


 シャンデリアを初めて見たんだもんな、そんな感想になるか。


 ルルがこの世の終わりを予感するほどの大きさのシャンデリアやふかふかのじゅうたんできらびやかに室内にはさすがの俺もアリバの成金嫌いに同情せざるを得なくなってしまった。


 庶民にはきついよ。


「あ、お父さん!」


 アリバが突然駆けだしてカウンターの奥に声をかけた。


 他の従業員に何やら指示を出していたガタイのいい男はアリバの呼びかけに気づくとにこやかに彼のもとへいった。


「レンさん、ルルさん、こちらが僕の父親でギルドマスターのレオスです」


「はぁ!?」


「どうも。お二人とも。アリバの父のレオス・アフマドです。どうぞごひいきに」

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