第24話 商人の父
「ご丁寧にどうも。俺はレン。こっちは」
「ルルという名でとおっている」
自分の名前はそういう風には言わないんだよ。あとにらむな。印象最悪だろうが。ハザールに行ったらそういうのも教えないとな。まともに生活できん。
「ほら、ちゃんと挨拶しろ」
「どうも」
けなげに頭を下げたルルをほほえましく見つめていると野太い声で、
「お二人はうちのアリバとどういう関係で?」
「彼がザゴブリンに捕まっているところを助けたといいますか、見つけたといいますか」
目が笑ってないのよ。下手なこと言ったら殺すって雰囲気なんだよ。
「それは本当かな、アリバ?」
「本当だよ。助けてもらって、ここまで送ってくださったんです」
先ほどまでの緊張した空気はどこへやら、コワモテの仮面を外したかのように急にレオスさんはフレンドリーな笑みを浮かべて、
「ありがとうございます!アリバを救っていただいて!本当にありがとうございます!この子に何かあったらと思うともう、なにも、ウオォォン」
は?泣き出したんだけど。大の大人がごつい体揺らしながら号泣しているのは同情とかの感情通り越して怖い。
職員の人たちはまただよ、みたいな顔してるし。
ルルも怖がって俺の後ろに隠れてる。
一通り泣き終わったのか涙でべちょべちょになった顔を拭きながら、
「あぁ、ズビッ、お礼をしなくてはなりませんね、10万ゴールドでどうでしょう、ズビー」
「そんなに!?」
レッドボアまるまる一頭売ったとしても2000ゴールドだから、ざっと50体分。さすがにもらいすぎな気がする。
「いやいや、そんなにはいただけないですって」
「もらえばいいではないか」
「ルルはだまってろ」
「いやいやいや、それでは私の気が済みません。1万ゴールドでもいいですから受け取ってください」
1万ゴールドでも十分大金だけどな。このままだと永久にいやいや言い争うことになるだろうから受け取っておいた。生活資金が手に入ったってことでいいか。
「お父さん。即時配達って空きある?レンさんの持ってるそれ送りたいんだけど」
「お願いできますかね。さすがに、重いんで」
初対面の人の前だから隠してたけどもうとっくに腕が限界にきていた。筋肉がスライムみたいに震えてんだよ。アリバよく気づいてくれた。
「空いてますよ。どこまでお送りしましょうか。費用はこちらで持ちますよ」
「ありがとうございます。ハザールでここから一番近い冒険者ギルドにお願いします」
ハザールでも冒険者として生活するつもりだし、鍛冶屋もギルドに併設されているからちょうどいい。
「それとこれなんですけど、見覚えありますか?」
「ちょっ!?」
突然俺の首にそのごつい腕を回すと、レオスさんは声を潜めて、
「その話は個室でしましょう。あまり人に見せてはいけません」
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