第22話 商談
二人を担いでダッシュはきつい…。
二人とも体格は小さいとはいえ腕ちぎれそうだった…。
ルルに至ってはなぜかニヤニヤしてて少し気持ち悪かった。
まあ当の本人はゼェハァいってる俺に目もくれずに行き交う人たちをさも珍し気な様子で眺めているのだが。
「おぁぁ。人が多いぞ。なんだここは、戦場か?」
「んなわけないだろ」
「ラサは商業が盛んですからね~。その分いい掘り出し物もたくさんあるんですよ~」
二人とも街を探索したくてうずうずしているような雰囲気を惜しげもなくまき散らしているが、あまり人の顔をじろじろ見てみたり店を冷かしたり目立つ行動は控えてほしい。
この街が安全と分かったわけじゃないからな。
「あんまり目立つ行動はするなよルル。安心できるわけじゃないんだからな」
「そんなことわかっておるわ。つまらんことを言うな」
一通り眺め終わったのかアリバが駆け戻ってきてはにかみながら、
「レンさん。契約のことなんですけど最後に一緒に行きたいところがあるんですけど、ついてきてもらえますか?」
「いいけど、どこ行くんだ?」
「ふふん。ないしょですよぉ」
そう連れてこられたのは薄暗く金属の鼻に残る臭いが漂う商店だった。陳列棚には色とりどりの鉱石が貴族の会議のように互いに主張しあいながら輝いていた。
「ここは?」
「鉱夫たちの直売所です。僕は鉱石商ですから鉱石でお礼をしようと思いまして」
「気持ちはありがたいが魔鉱はもらっても『コンポスター』のこやしになるだけだぞ」
魔鉱は魔素を含むから価値があるのであってその魔素が失われればただの石ころに様変わりしてしまう。
「大丈夫ですって。ちゃんといいの選びますから。すいませーん!マテライトありますかー!」
「主、マテライトってなんだ?」
いや俺も詳しくないんだけど。
「魔力をもたないが硬さと魔素の伝導性が極めて高いっていう話をギルドで聞いたことがある。いいのか?結構な値段すると思うが」
そもそも鉱石自体が高いのだ。店内を見渡してみても値札に4桁以上の数字が書いてあるものがごろごろしてる。
「お礼だって言ってるじゃないですか。黙って受け取ってください」
それなら遠慮なくとアリバにお礼を言っていると店の奥からいかにも鉱夫のようないかついマッチョが石を抱えながらぬぅっと現れた。
「おらよ、これでいいか少年。350ゴールドだ」
「うーん、そうですねぇ。この鉱石いらないの混じってませんか?不純物を含む場合純度が最大のものより値段が下がりますよね?」
おっ?値切り交渉するんだな。さすが商人ってだけあるな。目つきが鋭くなった。
「そうだな、だからこの値段だ」
「王都の市場相場では同量の純粋マテライト原石一つで400ゴールドでした。輸送費に平均して50~70ゴールドはかかりますから原料費だけを見ると値段はむしろ高いのではないですか?」
「その計算に俺たちの給料は入っているか?金がなければ俺らも生きていけないからな、その値段が上乗せされているのはわかるだろ」
「それは王都で売っているものにも含まれているものでしょう。それに、ほら、ここの部分に魔鉱が混じっています。魔鉱が混じっている場合マテライト内に浸食した魔素を取り除く作業が必要になりますから鉱石の価格は下がるはずです」
アリバの理屈攻撃に負けたな。うわ、おっさんの悔しそうな顔って悪魔みたいな怖い顔するっけ。
「くそっ、わかったよ。320ゴールドにまけてやる」
「純度の高い鉱石の値段に並んだだけですよね?不純物が含まれているならばもっと下がるはずですが」
「…300ゴールドだ!これ以上はまけてやんねぇぞ!」
「それでも高い気はしますがまあいいでしょう。この袋に全額入っています。どうぞ」
商談に勝ってにっこにこで戻ってくるアリバを見て思ったことが一つある。
「商人の話術こわぁ」
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