第20話 問答法
「なんでフェンリルが少女の姿をしてるんですか?」
スッ、グッ。
喉が強制的に封鎖されてザゴブリンの鳴き声みたいな音が漏れた。
いやいやいや、は?いつばれた?いやでもアリバの前では一度も変身といてないはずなんだが。
過去の記憶を一つ一つたどってみても俺の隣にいる記憶はあれどルルといる記憶がかけらほどしかない。一番長く話してたとしても俺がレッドボア解体してた時だからせいぜい数十分なんだがそこでばれたか?商人の話術にはまってルルが話ちゃったか?
「…-ん、レンさーん?大丈夫ですか?固まってましたけどちゃんと答えてくれるんですよね?」
「ああ、なんでもない」
さすがに契約関係のアリバにルルのことは話したくない。街で広まりでもしたら街の兵士が飛んでくるどころかハザールに入国するのも断られる可能性もある。
「それで?答えてくださいよ」
こういう時だけ強気になるなよ。
「フェンリルなんているわけないだろ。『管理者』がいるなんて知ったら今頃大騒ぎしているはずだろ?」
「だから人目につかない森の中を進んでたんじゃないですか?」
「俺が追われているって言っただろ」
「ではなんで一人で逃げなかったのですか?ルルさんはあなたの罪状に関係があるのですか?」
なおも強引に問いただしてくるアリバに我慢の限界だった。引くということを知らないのか。さっきから地雷踏みまくってんだよ。
「答える質問は一個だけといったはずだ。フェンリルなんていない。以上だ。早くいくぞ。お前の護衛ももうすぐ終わりだ」
契約さえ解消されればこいつとかかわることはもうない。それまでこの秘密は俺のうちに埋めておかなければ。
苛立ちにまかせて歩を早めた矢先、先行していたルルが底抜けに明るい笑顔で駆け戻ってきた。もちろん人間の姿で。
「街が見えたぞ!森を抜けた!国境だぞ二人とも!」
「でかした!急いで抜けるぞ!」
「えへへ~、もっと褒めてもいいんだぞ~」
ルルはくしゃっと笑うとにへにへ言いながら体をくねらせている。ルルまで変になったの?
やっと、やっとここまでこれた。ようやくスタートラインだよ。短かったけどギルドの勤務時間ぐらい長く感じたな。
「…?アリバ、行くぞ」
「あ、はーい。今すぐいきまぁす!」
さっきまでのシリアスな雰囲気の名残を微塵も出さずに駆け寄ってきた瞬間、後方からガラの悪い風切り音がすっ飛んできた。
「ぐえっ?!」
「アリバ!!」
空気をうならせながら飛来したそれは勢いのままアリバの背中を蹴りつけると彼を踏み台にして着地した。
「よお、久しぶりだなぁ、
二度と聞きたくなかった声だ。人を軽蔑しているような重く、ねちっこい雰囲気。
「…シュウ」
「とっとと捕まれや。俺のために」
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