第19話 質問商法

 国境の町まで目前というところまで来ていた。


 ルルが先行して道を示してくれているおかげでモンスターは一切見かけない。いままで倒してきた奴らもこっちから仕掛けなければ襲ってこなかったかもしれないな。


 フェンリル様様だな。


 特にトラブルもなく歩みを進めている途中、アリバがふと尋ねてきた。


「そういえばレンさんの前の職業って何だったんですか?」


「…ゴミ処理員だけど」


 ここにきて何を思って聞いてきてるんだ?もうすぐこの護衛も終わるっていうのに。


「いい職業じゃないですか。飢えることもないですし。なんで冒険者に転職したんですか?」


 確かにゴミ処理員は町の予算で給料をもらうから仕事をこなしている限り金欠になって死ぬようなことはない。だから俺も一生ゴミ処理員でいいとまで思ってた。


「閉鎖されたんだよ」


「ゴミ処理場がですか?でもそしたら町のゴミがあふれますよね?」


「閉鎖するしかなかったんだよ」


 人が亡くなったのだ。すぐそばで発生したワイバーンの大量発生の影響で街にまで飛んできた奴に食われてしまった。


「町のゴミは俺の家の裏で回収して処分していたから町に実害はなかったけど、俺への給料はなくなった。処分場の職員じゃなくなったからな」


「え?じゃあ生活は?」


「冒険者になる前は森でモンスター狩って食いつないでたな」


「モンスター狩って、ってそんなに簡単にいうものじゃないですよぉ」


 まあ幸いゴミ処理に必要な関係で多少は火魔法とか使えるしモンスターが見つかればそんなに苦しいものではなかったな。2,3日見つからなくて死にかけたことはあったけど。


「で、モンスターを追いかけていたときに冒険者に鉢合わせしてそこで拾われてしまった」


 それもシュウに、だ。あの頃は俺に隠された才能を見出したのかもしれないなんて絵空事のようなことを思っていたな。現実はただのおもちゃ役が欲しかっただけだったんだろうけど。


 うーん、あまり人に話すべきじゃないものだな。自分も聞き手も胸糞悪くなるだろうし。


「あーいやもう自分語りはしたくない。なんで今になって聞いてきた?」


 俺が尋ね返すとアリバは照れたように笑いながら、


「いやぁ、森の中をここまで迷わずに進んできたのが気になっちゃって。生活の努力だったんですねぇ。あ、もう一つ質問いいですか?」


「過去のこと以外なら」


 情報を手に入れたいっていう本能が商人にはあるっていう噂は本当かもな。俺が話すってわかった途端、目の色変えて声までトーンが上がったのを見ると信憑性はありそうだ。


 ここにきてアリバは深く息を吸い込んで瞑想でもしているかのように表情を無にすると、


「レンさん、なんでフェンリルが少女の姿してるんですか?」


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