第17話 なでられたい
*ルル視点のお話です。
主は最初からへんなやつだった。あのかたが主のところに行ったときも我らを見て驚かなかったのは我にもよくわからない。たまに見る人間たちは我を見ると腰をぬかして固まるか震えながら剣をぬいていたというのに主においては我らを見向きもせずお金の話をし始めたのだ。
なんて失礼な人間なのだろう。あのかたがついていきなさいと言わなければあのまま憲兵に捕まえさせて、ざまぁとでも言っていたかもしれない。
でもそれが主のやさしさだと最近になってきづいた。へんにシャキッとしたりぶるぶる震えないで同じ種族のように話しかけてくれる。それだけで我のなかみをすべてさらけ出せるようなあたたたかい気持ちになった。だから、その、わがままを言ってしまうのだ。すべて主がそうさせているのであって決して甘えているわけではない、はず。
今だって我とアリバが休みたいと言っていたから一人でモンスターと戦っているのであろう。じつは起きていたのだ。我には索敵術があるからな。ふふん。じょうじはつどうなのだ。
「主がもどってくるまでここをまもっておいてやろう」
主がやっていたように木の棒で火をツンツンしながらあたりをよく索敵してみる。主のもとに向かっている鳥がいるだけでこちらにはなにも近づいてはいないな。
主が知ったらなんていうのだろう。ありがとうか?いや、主は不器用だからな、寝てろとでも言ってきそうだな。我やアリバのためにやっていることでも金のためだの邪魔だのいって照れ隠しするのがバレバレなのだ。
それでも不器用なりにほめてほしいものだ。とくにあの手で!なんで二回もおあずけ食らっているのだ!主は手を伸ばすたびに嫌な顔して止めるし。母がいたときには一日に一回は頭をなでてもらってたのに今となっては誰もやってくれない。
撫でられ不足でやきもきしているとモンスターを倒しおわった主が戻ってきた。
「すまん、ルル起こしちゃったか」
主は戦闘がうるさくて起きたと思ってるらしい。違うのだほめてほしくて火の番をしていたのだ。
「主が我らをほうっておいてたたかっていたからしかたなくな」
「そうですかい。ほら、もう終わったから早く寝ろ。何のために野営してんのか分からなくなる」
「言われなくても寝るわ」
馬鹿なのか?!我馬鹿なの?!ほめられたいのになんであんなこと言ってんの?
じわっと涙がにじむ。たき火の煙のせいだといいたいとこだったがあいにくたき火には背を向けている。
結局その夜に頭を撫でられることはなかった。一晩中起きていたことは、主に知られたら怒られるだろうからここだけの話にしておく。
どうやったら主に頭を撫でさせられるだろうか。こちらとしては何年かかってでも撫でられる覚悟はできているぞ。
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