第14話 お叱り

「いやだ。疲れる」


「そうですよぉ。無理したほうが効率落ちますよ?」


 子供マインドどうしの結託が早い…。


「あのなぁ、一応俺ら追われてるんだけど?」


「僕には関係ないことじゃないですかぁ」


「雇った人間のことなんだから関係あるだろうよ」


 しまいには休む休むと駄々をこね始めた。駄々っ子に両手をふさがれながら、道なき道の中足元と周囲を確認して進むのは骨が折れるどころか骨粉になりそうだ。


 休めるか?近道をしているとしても馬車で先回りされてる可能性を考えるとゆっくりできない…というか追われてるときにゆっくりしようとしないんだよ普通は!


「国境まで少しだから、我慢してくれ」


「いやだ。休みたいわけではないのだ。眠い中歩くことをしたくないのだ」


 いや何のこだわりだよ。もうこっちが折れるしかないな。両手に意識もってかれるせいでさっきから枯れ枝だの木の根だのいろいろ引っかかってつまづいてまともに進めやしない。


「わかった、日が落ちたら野営するから離れてくれ。それこそ効率が落ちる」


「やりましたねルルさん!」


「うまくいったなアリバよ!」


 いぇーい、と輝かしい笑顔でハイタッチしていた二人だったが、足元の何かにつまづいたのかそのままつんのめってこけてしまった。


「おい大丈夫か。ちゃんと前見て歩けよ」


 転げたことも面白いのか顔を見合わせて笑いこけているが幸い二人とも血が流れるようなけがはしていないようだ。どれだけ休めるのがうれしかったんだよ。これからこいつらの足元にも気を配んないとだな。


「いつそこまで仲良くなったんだ二人とも」


「いやぁ、それはですねぇ」


「主が我の獲物でごちゃごちゃやってるとき」


 レッドボア解体してるときか。でも20分とかそのぐらいだったんだけど。


「よくあんな短時間でここまで…」


「主の取り扱いについておしゃべりしてたらいつの間にかな」


 ん?ちょっと聞き捨てならない。ゴミだらけって言われるくらい聞き捨てならない。

 本気で叱る頃合いか?


「俺の取り扱いって?教えろよ」


「いやぁ、えーっとですねぇ」


「それはだな…」


「なぁんで言っちゃうんですかぁ!?」


「主は我らが粘れば面倒くさくなってお願いを聞いてくれるとかな」


「そんなに自慢げに俺に話していいの?対策するぞ?」


 ルルの顔が驚愕に支配されたかと思うと目を泳がせて顔をそむけた。あほなんかな。あとルルと出会ったのも最近なのに取り扱いもなにもわかってないだろ。


「いまのはうそだ。主はそんな人間ではないよな?」


「いまさら僕がフォローできませんよぉ」


「休みも飯もなしにするか」


「ちょ、おい主!それはっ、ずるいだろ!ごめんなさい!ごめんなさいってば!」


 そこからはおとなしく日が暮れるまで黙々と歩みを進めた。そんなに強くは叱らなかったけどルルたちにとってはそこそここたえたみたいだった。

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