第13話 ご飯を一攫千金

「ルル、よくやった。何をとってきた?」


 粉々になった服を再構成しながら尋ねると、


「レッドボアだ。それもうまいやつ」


 Bランクモンスターであるレッドボアは王族の晩餐会で出されるほど上質な肉もさることながらその凶暴性と生息域が移動する性質から冒険者の間では「一攫千金」の二つ名がつけられている。それをこうもまあ短時間で狩ってこられちゃあ「一攫千金」が「金担いできたカモ」に変更してもいいかもしれない。ルル限定だけど。


「…いつもそんなの食ってたの?」


「うん。そこらへんにいるからな」


「一攫千金」なのこいつらのせいじゃね?


「そういうんだったら食わせてもらうか。こっちまで運んできてくれ」


 アリバのいるところまで戻ると俺は早速飯の準備に取り掛かった。


「なにをしている。早く食わせろ主」


「待て、生で食おうとするな」


 レッドボアの横っ腹に食いつこうとしていたルルを引っぺがすと、俺は手早く解体していった。とはいえ皮も骨も素材になるものだから俺が魔素を吸収しちゃってゴミになるから『コンポスター』だけでサクサク解体できた。


 作ったのは単純に肉を焼いただけの料理とも呼べないようなものだったがアリバもルルも目を輝かせて喜んで食ってくれたのは柄にもなくうれしくなってしまうな。焼いた肉を食べたのは初めてらしくうまいうまいと言いながら肉にかぶりついているルルほどではないが俺もアリバも休息を堪能した。


「さて、あと一日歩けば国境だ。追いつかれる前に急ぐぞ」


 追われている身とは思えないほどのんびりしてしまっているんだが一向に憲兵が追いついてくる気配がない。斥候ですらあの二人しか見ていない。捜索が難航しているかもしくはFランク冒険者一人の捜索ごときに資金を回してないかのどちらかの可能性が高いだろう。


 街道は比較的安全な箇所を通っているから大回りだし、俺らのように近道して森を突っ切ろうにも俺らの後を追う形が最短だから、もし目的地に気づいて先回りしようとしていても不可能に近いはずだ。


 ただ、シュウが駆り出されてくる場合には状況が変わってくるんだよな。あいつの得意魔法は風魔法。風に乗って移動速度上げるとか規格外なことができるっていうことを酔った本人から聞いたことがある。それが事実なら先回りされることも追いつかれる危険もあるが、事実追いつかれてないことを見るともう少し急ぐぐらいの意識で大丈夫そうだな。


「…なあ、二人とも。夜通し歩けるか?」


「なんでぇ?!」


「やだ」


 拒否の時だけ応答が速すぎね?

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