第12話 契約関係
「なんで冒険者におそわれるんですかぁ!僕なんの不正も働いてませんよぉ!」
「別にあんたを狙ってきたわけじゃない」
とうとうギルドに依頼出したか。
倒れている一人のポケットをまさぐってギルドカードを取り出してみるとEランクの文字が見えた。まあでもただの冒険者に高額な懸賞金はかけないだろうからあいつが出てくることはないはず。
「はらへった」
いや待てよ?ゴミ処理はどうなってる?ギルドのは全て俺に投げられてたし、町のだって俺が関わってる。そっちの損害を考えればあいつにも出動命令がかかってくるか?となると、
「あーるーじー。はらへったー」
「じゃあなんですか、あなたちが追われてるんですか何者なんですかこたえてくださいよぉ!」
「あぁうるっせえ!!わかったから離れろ!!」
こっちはこれからのこと考えてんのに!ルルはのんきだしアリバはなんか切羽詰まってるし。
「ルルと飯取ってくるから待ってろ」
「僕も行きます!」
「アリバはそこで休んでろ。まだ歩くんだ。さっきまでぜぇぜぇいってたやつは休む。いいな?」
「…わかりました」
飯のついでに処分しようと、のびてる冒険者二人を引きずって森の奥へ分け入った。この距離ならアリバからは姿も声も聞こえないはず。
「ルル、一つおつかい頼む」
「はらへってるといったはずだが?」
「肉でもなんでも好きなものとってきていい」
「そんなもの報酬になってない。我に肉を与えて敬えといったはずだ」
「じゃあおまえの分の飯やんないぞ」
「…我はらへってないし?我慢?できるし」
いやお前が腹減ったって言い始めただろ。そう突っ込もうとした矢先ルルの腹の虫からの盛大な抗議が響いた。
「…腹減ってんならはやくいったほうがいいぞ。こいつらを南においてくるだけでいいから」
「…あいわかった…」
神獣の威厳よ、お前はまだごみ箱に行くものじゃないだろ。元の姿に戻って暴風並の速さで駆けて行ったルルを見送ると俺はひとり休んでいるアリバのもとへ戻った。
「遅くなった」
「もうご飯できたんですか?」
「今ルルが取りに行ってる。で、お前は何が聞きたい?」
そう言うとアリバはさっきまでのへなちょこぶりはどぶに捨ててきたとでもいうように真剣そうな面持ちになって、
「あなた達はなぜ追われているのですか?護衛される身として知りたいです」
冤罪で追われてると正直に言ってしまうのもこれからの信頼を考えると有力な手だがこいつから情報が漏れてしまう可能性を考えると隠したほうがいいかもな。
「言えない事情があるというのでしたら詮索はしません。先ほども言った通りこちらは護衛される身、契約上では下の立場ですから」
こっちはお前をまだ完全には信用していない。
「…なんかアリバがまともに話しているの変だな」
「何でですかぁ!それ普通に悪口ですよぉ!」
「お前はそうやってぎゃあぎゃあ言いながら護衛されてればいいんだよ。何も考えずに」
だから俺のこともルルのことも明かさない。詮索させない。信用に足るとわかるまで。
「国境に着いたら話すかどうか考えてやるよ」
「約束ですから!」
そう言うとアリバは砂漠に照りつける太陽のようにまぶしい笑みを見せた。
「あるじー、とってきたー」
「今行くから待ってろ」
ルルの本当の姿もまだ見せられない。
俺はアリバのほうへ振り向くと、
「飯作るから待ってろ」
そう言ってルルのいる茂みへ向かっていった。
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