第11話 コンポスター撃退

「おいアリバ!なんかないのか!今なら言い値で買う!」


「そういわれても~!鉱石商になにを求めてるんですかぁ~!」


 こいつがいる以上ルルで逃げるわけにもいかねえし、走って逃げるしかっ!追っ手の足音も聞こえてきた。かなり足が速い。


「このままでは追いつかれるぞ。撃退か?」


「なんでもかんでも戦おうとするな、この戦闘狂!」


「ぜぇ、はぁっ、ぼ、僕もう、走れませんよ~」


 へなちょこ商人をおいたとしてもいずれ追いつかれる。戦闘は避けられないか。


 藪を踏み地面に落ちた枯れ枝を折り、生え茂る灌木の枝葉を揺らしながら足音がだんだんと距離を詰めてくる。


 心臓の激しい伴奏を耳奥で感じながら、木が途切れぽっかりと空が見える場所で立ち止まった。


「ルル、追っ手の場所わかるか…」


「左右に一人づついるぞ」


 臨戦態勢をとる俺らをからかうかのようにそいつらは追いつくと近くの茂みで立ち止まり姿を見せずただ濃密な緊張感だけを発していた。


「追いつかれましたよぉ。どうするんですかぁ。お金払うから見逃してくださいよぉ!」


 刺客に襲われた貴族みたいなこと言ってる場合か。


「アリバ!戦えるか」


「戦闘能力皆無ですよぉ!鉱石商に鉱石以外を求めないでください!」

 使えねぇー。


 一向に追っ手は襲う気配も見せず、ただ茂みのうちでカサカサと音を立てているだけ。にらみ合いが続き、緊張感がぶつかり合い殺気に変ったとき、辛抱たまらずといった表情のルルと同時に飛び出した。アリバの悲鳴にも似た、おいてかないでくださいボイスを背中に感じながら向かっていく俺をめがけて茂みから水の弾丸が放たれる。すかさず放った風魔法でそらした水の弾丸が後方の木に命中すると木のどてっぱらに大きなうろを開けていた。


「なんてもの人に撃ってんだよ…」


 じゃあこっちの番だ、ゴミはそろった。


「『コンポスター』!」


 俺の『コンポスター』はゴミと認識したものを変換できる魔法。ゴミというものの定義に関して魔法も例外ではない。魔法発動後に残る各魔法の残滓が残った魔素だってゴミなのだ。今発動されたのは風魔法と水魔法。それを掛け合わせると、


「雷霆!」


『コンポスター』によって造られた電撃は不規則な線を描きながら茂みに一直線に飛んでいった。


 水と風があり雲ができ雷が鳴る。自然の法則の再現。

 焦げた臭いのする茂みの中に追っ手が気を失っているのを確認して振り返るとルルも倒し終わって追っ手を明るいところへ引きずり出していた。


「なあ、主。せっこうとはこんなに弱い奴らなのか?」


「いや、こいつらは本当の斥候じゃない」


 戦闘から退避していたアリバも戻ってきてルルと共に顔にはてなマークを浮かべている。


「こいつらは冒険者だ。俺がいたとこのな」

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