第10話 ゴミ決壊す

 *シュウ目線でのお話です。





「ったくおとなしくしとけばいいのによ。おいそこ!てめぇらも斥候だ。南東に向かえ」


「で、ですが!俺たち斥候の経験なんて…」


「魔素の濃淡調べることに経験もクソもねぇんだよ!さっさと行け!」


 ったくなんでこんなことやらされてんだ。筆頭冒険者がよ?S級冒険者のシュウ・アキルノがよ?ただの雑魚ごみ処理員の追跡とかやる身分じゃないだろうが。


「シュウ様、いかがいたしましょうか。痕跡はここで途切れてしまっています」


「だから斥候増やしてんだろうが!そんなこともわかんねぇのかよ!小隊長やめちまえよ!」


 レンのヤロウ小賢しいことしやがって、とっとと捕まれよ。盗んだうえに逃亡の罪重ねるとか馬鹿なのかあいつは?憲兵も使えねぇ馬鹿しかいねぇし王家のやる気はねぇしでこっちのやる気はガンガンにさがってるんだが。




 そもそも俺が雑兵のように駆り出されているのはギルドで依頼されたからだ。レンを追い出した翌日いつものように依頼をこなしてギルドに帰るとギルドの中に生臭いにおいが充満していてとてもくつろげるような状況でなくなってた。


「おいギルマス掃除しとけよ。こっちは依頼で疲れてんだよ」


「すまんシュウ殿。やっても片付かんのだ」


「はぁ?前はこんなことなかったじゃねえか」


「素材の処理で手一杯なんだよ。バーのほうへ回す人手がない。我慢してくれ」


「ったくわかったよ。じゃあ素材の買取だけしろ」


「だからそれも無理なんだ。廃棄物の処理で手いっぱいだといっただろう」


 あいつ一人いなくなっただけでこうはならないだろ。一人Fランクが居なくなるなんてしょっちゅうなのに今回だけギルドが閉まるレベルになっている。あいつにどれだけの仕事量やらせてた?俺は受付のカウンターに頬杖をついてそんなことをがらもなく考えていた。


「クソっ。レンに投げたら一瞬で片付くゴミなんだが…!」


 ギルマスの口からは先ほどから愚痴しか生成されてない。


「話が変わるが、シュウ殿」


「あ?何?」


「あんたに王家から依頼が来てる」


「報酬は?」


「お前さんの身柄」


「はぁ!?マジでいってんの?それとも馬鹿なの?」


「本当だ。依頼書見てみろ。ほら」


 そう渡された依頼書に書かれていたのは報酬として俺の身柄、依頼内容として、


「レンの確保!?」


「そうだ。街のほうのごみ処理もあいつのところに行ってたからな。街の危機に王家も動いたということだ」


「そうじゃねぇよ!!なんでレン確保の報酬が俺なんだよ!?」


 あんな雑魚ゴミ懸賞金ちょっとかければ別の暇な奴らが捕まえてくるだろうが!


「簡単だ。お前が追い出したから、以上だ」


「それだけかよ!」


「それだけじゃない。私の首もかかっている。憲兵を派遣してくださるようだから頑張れよ。死なないように」




 そう、半ば無理やり押し付けられて今に至る。あいつを追い出したのだって足元でちょこまか動いていてむかついたからで俺に非はないはずなんだが?とらえたら原型なくすまで殴り倒してやる…!怒りの炉に薪を継ぎ足していた俺のもとにまた一人雑兵Aが慌てているような歓喜しているようなよくわからん不細工な顔をして寄ってきた。


「東方面に魔素濃度が異常に低い地点が連続しています!」


 東、ハザールに行こうとしてんのか。


「総員ハザールとの国境へ向かえ!!国外逃亡する前にとらえろ!さっさと走れぇ!」


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