第7話 リサイクル
「どうだ主よ。うまくできているものだろう?」
「なんで服着てないんだよ!」
「なんでって服まで変身する必要はないだろう。それよりどうだ?人間らしくなっただろう?」
「わかったからまず服を着ろっ!!」
バックから引っ掴んだ服一式を手首のスナップだけで後ろに投げつけた。もう一つあらぬ罪状を増やされたらたまったもんじゃない。見た目が変わったのはいいんだが、子供連れの冒険者なぞいるはずもないんだよな。
いっそこいつに冒険者登録させるか?いやでもそもそもこの姿で戦えるのかがわからないしな。それに登録するときにステータスが開示されるからばれるか。
衣ずれの音がやむ。やっと着終わったようだ。
「服着てるな?振り向くぞ?」
「…ああ。いいぞ」
少々不貞腐れ気味なのはまあしょうがないか。
パンツや下着もろもろが落ちているのは、そうだよな、サイズ合わないよな。
「なんでこんな動きづらいものをまとわなければいけないのだ」
「人間がそうしているからだ。我慢しろ」
むぅ、とむくれてはいるが何とか我慢してくれているようだ。
「…そういえばお前、名前はある?」
「ルルだ。今更だな」
初対面で逃亡劇を繰り広げていたんだから今更にもなる。
「んでルル。こいつらを破いてくれ」
俺はパンツや下着を拾いあげルルに手渡した。
ルルは大きな目をさらに大きくして、
「は?何を言っておる?」
「いいから」
俺も一緒に引き裂いていく。しばらくもしないうちに布切れの小山が出来上がった。
「…よし。粗方破り終わったな」
「で、どうするのだ?」
「離れてろよ」
言われるがままにルルが数歩下がったのを確認して、俺は魔法を発動させる。
「『コンポスター』」
布の山が瞬く間に光の粒になって消えたかと思うと、その光の粒によって先ほどとはいくらか小さくなったパンツがくみ上げられていく。『コンポスター』は生ごみからたい肥を作るコンポスターさながらにゴミと認識した物体を魔素に変換して生成する俺の固有魔法。ゴミ処理員としては重宝してた魔法だ。
「ほら、着てみろ。サイズは合わせたはずだ」
ルルはおずおずと手に取りボス級の魔物を扱っているかのように慎重に足を入れるとわずかに口を開けておぉ、なんて声を漏らした。
「すごいな。固有魔法か?」
「そうだ。それで…」
「おい、流すな」
「お前に説明してる時間なんぞないんだよ。それで、これからなんだがハザールに行こうと思う」
「ハザールとは」
なんだその辞書の見出しみたいな聞き方。俺はバックから地図を取り出すと地面に広げた。冒険者登録をしたときにもらった簡易版だが今はそれで十分だろう。目の前にしゃがんできたルルと頭を突き合わせる形で地図を覗き込んだ。
「今いるのがここ、ヴォルガ王国。で、ハザールがここ。ヴォルガの東だな。今俺らは…ここらへんだ」
共同墓地から国境まで歩いて一週間というところか。でも、
「元の姿に戻れば3日でつけるな」
「これからの移動は基本的にお前が命だ。頼む」
ルルは顔を上げると任せろと言わんばかりに微笑んだ。
「……」
無意識のうちにルルの頭へ手を伸ばしていた。
「…なんだその手は」
無意識に犬扱いして撫でようとしたんだろうな。一瞬の思考の末に出てきたのは、
「扱い方がわからん」
「ストレートだな」
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