第4話 3匹のモンスター

「なんでこの鏡がここにあるんだよ?」


 投げ渡されたのは俺が盗人呼ばわりされるきっかけの鏡。ギルドマスターの手にわたっていて今この場にあってはいけないもの。


「もともとわしのなんじゃよ。おぬしのような人間を探すためのな」


 すぐに返してもらったわ、と得意げに話している。


「俺のような人間?」


「鏡を見てみなされ、理解するじゃろうから」


 爆発物の入った樽を覗き込むように恐る恐る覗き込むと険しい顔をした俺の顔面といくつかの文字列が映っていた。


「その鏡はステータスを測定できるのじゃよ。ほれ見てみぃ」


 映る文字列に目を凝らしてみると確かに俺がギルドで測ったステータスと一致している。



 レン・ガーベッジ Lv15

 攻撃33

 防御28

 魔力5000

 俊敏35

 スキル 火魔法 土魔法 風魔法 固有『コンポスター』



 いつ見ても装置が狂っているとしか思えないステータスだ。でもまぁ、そういうことだろうな。


「あんた、俺の魔力に目を付けたんだろ。どうせ」


「そうじゃ。この子らを育てるには相当の魔力が必要じゃからの」


 そう、魔物を育てる、つまりテイムするには相応の魔力を消費する。魔物が放つ魔素をすべて魔力で吸収しなければ魔物を従えることはできないのだ。


 イメージとしては魔素は水、魔力はそれを受け止める杯だろうか。


「どうじゃ?受けてくれんかね?」


「報酬は?それ次第だ」


 シュウのせいで明日生きるための金すらないんだ。生半可なアイテムよりも金だ。


「普通の生活をしていれば一生遊んで暮らせるな」


 それで十分じゃろ?というように老人は口角を上げた。


「…受けてやるよ。その依頼」


 胡散臭いがまあいい。騙されてやろう。今はどんな手段を使ってでも金を稼がないと生きていくことすらできないからな。


「さて、ここに3匹のモンスターがいるじゃろ?好きなモンスターを選んで育てるといい。ちなみにイフリート、フェンリル、リヴァイアサンじゃ」


 ちなみにで済む名前じゃないだろ。


 改めて見上げてみると3匹とも闇でぼやけた輪郭の中でかがり火のように瞳を揺らしショー直前の観客のような期待感に満ちた雰囲気を醸し出しているように見える。


 何を期待しているんだ?人間に育てられるなんてそんないいものでもないだろうに。


 あ、目が合った。


 早く自分を選べとでもいうように6つの視線が俺の顔に突き刺さる。裁判に出席した被告人の気分、今体験したくないんだけど。早く選べって?はぁ、わかったよ。とはいえ一応公的には俺はギルドを追放された身、下手に目立って因縁付けられる可能性もある。移動性能は高いに越したことはないが目立ってはいけない二律背反。そうするとイフリートはないな。ドラゴンは目立つし空を飛べたとしてもすぐ見つかって面倒事の巣に突っ込むことが容易に想像できる。


 となるとリヴァイアサンかフェンリルになるが。どちらも並のモンスターよりは大きいから目立つのは同程度として。フェンリルって狼だから犬と同じでなつきやすいよな?うん。決まった。


「フェンリルをもらうぞ」



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