『なぞの階段』 中


 それから、少しして、お店には突然、閉店の張り紙がでた。


 あまり、お客様とは、深い繋がりを持たなかった、あのマスターとママらしい、あっけない、閉じ方だった。


 ちょっと店の前に立たずんでいると、中から何かの業者の方らしき人が出てきて、鉢合わせした。


 『あなた、ここの、お客さんかい?』


 『まあ、そうです。』


 『なんか、聞いてないかなあ。連絡先とかさ。おいら、地主なんだけど、まあ、借金とか未払いとかは一切なくて、と、いうより、先払い貰いすぎてて、話ししたいんだけど、まったくわからなくて。』


 『いやあ、なにも聞いてません。あの、名残惜しくて、ちょっと中見てもいいですか?』


 『ああ、いいよ。なんにも、金目のものはないよ。』


 『階段上がるだけです。』


 『ああ、あれね。あれはね、先代のさ、所有者が作ったものでね、なんでも、あそこにあがると、不可思議なものが見えるんだとか。おいらも興味があって、さっき上がってみたけど、な〰️〰️〰️〰️にもない。まあ、カウンターの裏の、調理スペースが見えるかな。』


 『先代のかたというのは、何をなさっていたのですか?』


 『小さな料理屋だった。なかなか、人気はあったんだが、主人が重い病気で止めた。その、たったひとりの弟子が、あのマスターだったのさ。ママは、店員さんだった。先代のおくさんは、いなかったような。ずっといなかったのかどうかは、わからないよ。先代のなくなったあとを継いだが、時代も変わってね、港町のここは、昔はえらく栄えたが、いまは寂れちまったし、で、喫茶店みたいにしたんだ。ギリギリだったはずなのに、金は持ってたみたいだな。不思議だったよ。じゃ、勝手にどうぞ。おいら、ちょっとしたら帰ってくるが、待ってなくていいよ。』


 なんとも、開けっ広げなオーナーさんであった。


 

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