第30話 世界の中心・神殿05。

知らせる者と与える者は禁止事項で神殿には近付けないと2人を見送る。


「神殿はここから約半日の所にある」

「アーティファクト・キャンセラーは屋上に置かれているから一目散に屋上を目指すといい」


「敵の神の使いもわざわざ危険を冒してまでアーティファクト・キャンセラーを持って地獄門までは行かないだろう。きっと神殿にある」

「神様の許可が出たら助けに行くから死なないでくれ」


2人の神の使いの見送りを受けてキヨロスとマリオンは神殿を目指す。

歩きながら「禁止事項とか特例処置とかわけわかんないね」「本当だね。でも残り10日くらいだったなんて気付かなかったよ」と話す。


「これで解決したら長生きできるから良かったね」

「うん。ありがとうマリオン」


テンポ良く会話が進むのは日数にしたらまだ10日くらいにしかなっていないがキヨロスとマリオンが旅をしてきた結果でこんな時でも穏やかな空気が2人の間に流れている。

キヨロスにありがとうと言われたマリオンは「ううん」と言った後で少し照れ臭そうに「終わったらさ、どこでも良いから住もうよ。私もルルに頼んで人間になるから一緒に住んでよ」と言った。

キヨロスが少し驚いた顔で「マリオン…」と言うとマリオンは「嫌…かな?」と聞くとキヨロスは首を横に振って「嫌じゃないよ。ありがとう。マリオンと旅をしてたら一緒にいるのが当たり前みたいに思えてたから嬉しいよ」と返した。


「お姉ちゃん達にヤキモチ妬かれるよね?」

「そうかな?」


「アンタって鈍いよね」

「そうかな?」


マリオンが呆れながら「そうだよ」と返した時、前方に光が見えてキヨロスが「あ…出口だ」と言った。



緩やかな坂の向こうに光が見えた。

出口の先は気持ちのいい草原と木々、穏やかな日差しが溢れる島の真ん中だった。

目の前には巨大な建造物、神殿がキヨロス達を出迎えていた。


「行こうマリオン」

「うん!行くよ!」


キヨロスとマリオンは神殿に入ると階段を探して駆ける。

あっという間に最上階に着くとそこにはジョマが立っていた。


「ジョマ!」

「何でここにいるの?」


ジョマは意外そうにキヨロスとマリオンを見て「あら、誰か来たと思ったけどサウスの坊やと人形の子じゃない。何?私がカーイを連れて地獄門に行った隙にアーティファクト・キャンセラーを盗もうとしてたのかしら?」と聞く。


キヨロスの「そうだ。でも何でここにまだ居る?」と言う質問にジョマがガッカリしたような呆れるような顔で「カーイよ。あの子がダメダメなのよ」と言って「本来ならアーティファクト・キャンセラーが発動したら私の飛行の力で地獄門を目指そうとしたのに病弱なカーイはアーティファクト・キャンセラーの反動で死にかけたの。無理矢理飛行で連れて行っても途中で死にそうだし、地獄門の前で殺さないと意味がないから復調するまで下の部屋で寝かせているわ」と言ってヤレヤレとジェスチャーをした。


まさかカーイが理由でジョマがここに居るとは思わなかった。

驚くキヨロスとマリオンに向かってジョマが「まあ暇つぶしにはいい相手よね。アーティファクト・キャンセラーはここよ」と言って指差すと祭壇の上にアーティファクト・キャンセラーはあった。


距離を測るキヨロスとマリオンに余裕の表情をするジョマが「後はお礼と文句でも言おうかしら」と言った。


「お礼ですか?」

「文句?」

「レットやゾナーにミスティを殺してくれたでしょ?あの子達も私も元は同じ存在。地獄門の向こう側、ガーデンで言えば魔界、私達の神様が名付けたパラダイスを作った神様が用意した神の使い。

ガーデンの神の使いは6人の神の使いそれぞれに限定的に能力を与えたけど私達の神様は6人それぞれに同じ能力をくださった。そして力を6等分された私達は他の神の使いが死ぬ度に五等分、四等分と力を割り振られる」


この説明の意味に気付いたキヨロスは「じゃあ…今のあなたは」と言うとマリオンが「誰とも分けていないの?」と続けた。


「正解。だから私ってば強いわよ」

ジョマはそう言うと剣を抜いて斬りかかってきた。

キヨロスは剣で受け止めると「マリオン!僕がやる!マリオンはアーティファクト・キャンセラーだ!」と言う。


「うふふ。奪ってどうするの?破壊するかしら?でもね、壊しても衝撃波で破壊者は死ぬわ。それでもいなら試しなさい」


ジョマはそう言っても攻撃の手を緩めない。

キヨロスと斬り合ったかと思えばマリオンを狙う。

明らかに女性の膂力で放てない剣撃、獣のような身軽さや足取りにキヨロスもマリオンも苦戦をする。


「あはは!サウスの坊やは辛そうね!2人がかりにならないと死ぬわよ!」

そんなジョマの攻撃をなんとか凌ぎながらアーティファクトキャンセラーに到着をした。


「アーティファクト・キャンセラーは重いわよ!持った瞬間に斬ってあげる!」

マリオンはその言葉を無視してアーティファクト・キャンセラーに手を伸ばすと「アーティファクト・キャンセラー停止!【アーティファクト】」と唱えた。


「まさか!?」

ジョマがそう言って慌てたがマリオンは「バチっ」と言う音と衝撃に弾かれた。


「あは…あはは!おどかさないでよ!残念ね!あなたが使った擬似アーティファクトや人工アーティファクトをアーティファクトとして認識されてしまったようね!そもそもアーティファクト・キャンセラーで停止していないけどあなた自身がアーティファクトと認識されたのかも知れないわね!」


ジョマが高笑いをする中マリオンは再び起き上がるとアーティファクト・キャンセラーに向かって走り出すと大ぶりで剣を振った。


ガィィィンという音の中でマリオンは更に剣を振るう。

何度も剣が当たる度に聞こえてくるガンガンガツガツという音とわき目もふらずに剣を振るうマリオンの異常さに、ジョマは慌ててマリオンに声をかける。


「やめなさい!アーティファクト・キャンセラーが壊れたらあなた死ぬのよ!」

「知らない!私が死んでも世界にアーティファクトを取り戻す!そうしないと皆が死ぬ!お爺ちゃんもマリーも、コイツの大切な人達が死ぬ!だから私が死んでも構わない!」


そう言ったマリオンが更に剣を振るいながら「ほら!止めにきなよ!一緒に衝撃に巻き込まれる!?」と言って止まらない。

ジョマからしても衝撃波は良くないのかマリオンに近づけずにいる。

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