第29話 世界の中心・神殿04。

翌日もただただ神殿への道を前進をする。

三の村の出入り口が見えなくなり前も後ろも同じ景色になって、一瞬どっちに進んでいるか不安になるが後ろには埃の上に足跡が出来ていて安心する。


しばらく歩くと、初めて景色が変わった。

通路の横にドアがある。

いきなりドアを開けるのもどうかと思い中を伺おうとした時、中から男のうめき声と女の声、そして殴りつける音が聞こえてきた。

キヨロスとマリオンはドアの隙間から部屋の中を覗くと縛られた2人の男と拷問器具を持つ3人の女が居た。


ドアが開いている事に気付かない5人を見ていると男の方は見覚えがないが、女の方は女型の神の使いだった。


「ほらほら、アーティファクト・キャンセラーが発動したんだからとっとと神の居場所を言いなさい」

「もう何十年も縛られて拷問されて辛いでしょ?」

「あはは、ミスティもレットも無理言い過ぎよ。どうせ使えない神の使いだから知らないのよ。もう殺してジョマに合流しましょうよ」


「ゾナーの言う事も確かにだけど半分人間になってて、アーティファクト・キャンセラーのせいでコイツらを殺せる武器もないし、このまま放置って言うのもね」

「それにしてもパーンもシークも殺されちゃうなんてね」

「油断が過ぎたのよ。早くこの世界を滅ぼして私達の神様をお招きしましょうよ」


「本音はそうしたいけど神様はガーデンの神の目の前でボロボロになったガーデンを見せたいはずよ?その為にはガーデンの神を呼ばせないと」

「それは神様にお任せしましょうよ」

「そうね。じゃあコイツらは死ななくても首絞めちゃいましょう?前に一年首絞めた時はずっと苦しそうだったわ。誰も助けに来れない中で永遠に苦しめましょう!」


3人の女の神の使いは「あはは」と笑うと「賛成〜」と言いながらロープを用意して縛られた2人の神の使いに向かって進む。


キヨロスとマリオンはアイコンタクトでタイミングを測るとドアを蹴破って一気に3人の女の神の使いを殺す。

半分人間と言っていたからか人間と同じように死んだ後はシークと同じように消えた。


初老の見た目をした神の使いが縛られたまま「き…君達は?」と聞いてくる。

キヨロスは神の使いの言葉には答えずに「マリオン、多分この人達が与える者と知らせる者だよね?」と確認をするとマリオンが初めて質問に答える形で「私達は他の神の使いから神殿に行ってアーティファクト・キャンセラーを確保するように言われたんだ」と言って縛られていた縄を解いた。


「俺は与える者、今確認するから待っててくれ」

与える者は板のような何かを部屋の端から出すと忌々しそうに舌打ちをすると「くそっ、ガーデンの設定を無茶苦茶にされてる。今すぐ可能な範囲で直す」と言って板に向かって何かをし始める。


「無茶苦茶ですか?」

「疫病が蔓延して子供が生まれなくされて、作物の収穫量は最低、魔物はこれでもかと出されてる!」


キヨロスがここで初めてガーデンの不作や疫病なんかが全部女の神の使いの仕業だと言う事を知り、神殿に来られて良かったと思った。


ここでやり取りを見ていた知らせる者が「君達!済まないがこのまま私の部屋まで来てくれ!ここから1日の所だ!与える者も頼む!」と言って扉に向かうが与える者が「その前にここで2人に食事だ。今すぐ出来ることをやりながら休ませて一気に行った方がいい」と言うと与える者は傷だらけの姿で料理を用意してキヨロスとマリオンに振る舞う。


「今も見てたけどキヨロスとマリオンだな。授ける者達には助かった報告はした。とりあえず俺から2人に与える者として特例処置を行う」


これにマリオンとキヨロスが顔を見合わせて「また特例処置だ」と言う。


「まあそれくらいの事態って話だな。とりあえず残り10日くらいの命しか残ってないキヨロスとマリオンを80歳になるまで補填した。魂とアーティファクトのバランスも今のままなら問題なくしてあるから安心してくれ」


この説明に正直驚いたキヨロスが「え?そんな事を?」と言って横でマリオンが「残り10日だったの?よかったじゃん!ありがとう!」と言う。


簡単に食事を済ませると歩きながら疑問に答えてもらう。与える者は試練や祝福を与える事を使命とした神の使いで、先程の板から色々なモノを操作できることから女の神の使いに狙われたのではないかと言う話だった。

もう1人の知らせる者は「龍の顎」や「創世の光」等の危険なアーティファクトが世に出た時やガーデン滅亡の危機に瀕した時等に唯一通知が届き、更に神に連絡を取る事が出来る能力を持っていた。


「私達は万一に備えてこの神殿までの道に住む事を神様の許可を得て住んでいたのだ」

「たまに人間が迷い込んだ時とかに追い返すのも仕事でな」


「おそらくそこを狙われたのだ。最初に私が3人の女の神の使いに襲われて」

「知らせる者を殺されたくなかったら大人しくしろって俺の所まで来られた」


「それで何十年も拷問を?」

「ああ、酷い目に遭った。アイツら神様を呼べと言っていたがご迷惑がかかるから無視をしていたんだ」


知らせる者は知らせる者の部屋に入ると与える者同様に板を取り出すと「神様に事情はお話しした。この知らせを見てくれればガーデンに御降臨なされる」と言う。


だがこれで解決ではない。

マリオンが「それ、いつ?」と聞き、キヨロスが「今すぐじゃないと地獄門が開くから行かなきゃ」と言う。


「危険だぞ?」

「知ってる」

「アーティファクト・キャンセラーが使われてるから僕達は弱いけどそれでも奪い返さないと。もしかしたら今も仲間達が地獄門でジョマと戦ってるかも知れないんです」

言うだけ言うとキヨロスとマリオンは先に進む。

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