第26話 世界の中心・神殿01。

1度目の時間のやりとりでガクが戦争になった経緯を知っていた事もあり、王達の話し合いは順調に進んで翌日には終戦となった。

アーイの昏睡はまだまだ続くのでアーイが起きた時には終戦している事を思うとガクは嬉しい気持ちになる。


だがここで問題が起きた。

身体が弱く、外界から隔絶されていたはずのカーイの姿が消えていた。

お世話人のジョマと言うメイドも居なくなっていて嫌な予感が皆に募る。

だが家臣達に悟らせるわけにはいかないとして箝口令を敷いてカーイの探索をした。

病弱なカーイを連れて遠くに行けるワケが無かった。

だが戦闘から3日が過ぎたが依然としてカーイは見つからなかった。


キヨロスの調子は落ち着いているが、魂を補填するアーティファクトはアーティファクトに造詣の深いウエスト王にも分からないとのことで、とりあえず今まで通りトキタマの解脱を待つしかないと言う話になる。


そしてキヨロスはマリオンと口喧嘩の回数が増えた。

議題は「誓いの指輪」を外す外さないというもので、キヨロスはマリオンに外して欲しいと言い、マリオンは共に死ぬから嫌だと返す。


「マリオン!君はまだ13歳だよ?」

「アンタだってまだ15歳だよ。それに私の13歳ってのはマリーの年齢だからあんまりアテにならないよ」


「なら尚更だよ!」

「マリーの記憶があるから別に平気だよ」


「外してくれ!これ勝手に外しても相手の意思がないと魂が繋がったままだって神の使いが言ってたんだよ」

「うん。だから外さない」


「マリオン!」

日々行われるこんなやりとりをガクは微笑ましく眺めて「いいじゃないか」と言う。


「何がです?」

「俺は自分がキヨロスの立場なら外してくれと思うし、マリオンの立場なら外さないと言う。どっちもわかるから「いいじゃないか」と言った」

これにはキヨロスも思うところがあるので唸ると黙ってしまう。


「それより神の使い呼ぼうよ。見守る者が今も見てるんだよね?」

「うん。たぶん見てる。でもだとしたら何で来ないんだろう?」


キヨロスはどこに向かうでもなく外に向かって「神の使い、来てください」と呼ぶとキヨロスが借りている部屋に授ける者が現れると少し困った顔で「キヨロス、どうしました?そうそう神の使いを呼ぶものではないのですよ?」と苦言を呈する。


「え?何言ってるの?僕達この前神の使いを名乗る女を倒したんですよ?」

「それは本当ですか?ではなぜ見守る者や記す者から連絡が無いのでしょう?」

授ける者がすぐに残りの神の使いを呼び寄せてキヨロスとマリオンがサウスを出てからの事を確認をする。


すると…。


「え?ルルとツネツギが創世の光を撃った記録が無い?」

「アーイが昏睡する原因の魔女との戦闘の記録が無い?」

キヨロスとマリオンの度の記録が所々で無かった。

これには授ける者も驚きの表情で「記す者、どういう事です?見守る者?」と言う。


「僕はキチンと記しました!キヨロスは「時のタマゴ」で時を跳んで常継の妹とテツイを確保してテツイの「悪魔のタマゴ」を外して「創世の光」をイーストに渡し、数日後に時を跳んでノースに瞬間移動をしてきて和平会談をやり遂げました」

記す者の説明に見守る者も「僕が見たものと同じだよ」と言う。


「…それってあの女の神の使いが居ると見る事も書く事もできなくなるって事?」

「…そうとしか思えません」


「それよりも「悪魔のタマゴ」ってあの女の自作みたいだけどそれも疑問に思わないの?」

「確かに…、本来なら見守る者から知らせる者に通達が行く案件です。見守る者?」

「僕は何でだろう?今の今まで普通の事に思えてしまったよ。記す者は?」

「僕もです」


神の使い達の困惑の声と表情で気持ちの悪さが充満する中、これ以上話せないと思ってガクが「じゃあアーイの弟のカーイはどうなってる?行方不明で皆で探してるんだ」と見守る者に聞く。


見守る者は何かを見る用に中空を見て「ノースのカーイは……」と言って数秒後に「え!?」と驚いた。

このリアクションに授ける者が「見守る者?」と何があったかを聞く。


見守る者はとても神の使いに見えない顔で「神殿に居るよ…」と言った。

これには授ける者も声を荒げて「馬鹿な!」と言う。


心配そうにキヨロスが「神殿?何ですそれ?」と聞くと授ける者がガクを見て「ガク、世界地図を借りてきてください」と言った。


ガクが世界地図を仮に行くと別室のルルと常継も付いてくる。

大筋の説明を済ませると授ける者が世界地図を開く。


真四角な世界が斜めに四等分されてノース、ウエスト、イースト、サウスに分けられている。

世界の真ん中は海と書かれている。


海を見た常継が「海?これは湖とかじゃないのか?」と疑問を口にするがガーデンの人間は誰もが疑問に思わない。

神の使いすら「何を言っているんですか?」「あなたの世界はそうなんですね?」と言い出す始末だった。


授ける者が地図の真ん中、何もない所を指さして「ここ、その海の真ん中に島があります」と言うと見守る者が「普段は人が立ち入れないように作ってあるからここに人が辿り着くなんてあり得ないんだ」と続けて、記す者が「海は魔物の巣窟です。島に近付けば近付く程に魔物に狙われます。だから地図に島はないんです」と説明をした。

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