第22話 ノース/ウエストガーデン04。

キヨロスとマリオンが戦っている時、「ザンネ!」と叫んだ女の声が聞こえる。

キヨロスとマリオンは集中を切らさないように声の方を見るとノースの男の前に鎧姿の女が立っている。


「アーイ、来たんだね。お帰り。今からイーストに攻め込んで滅ぼすから城に帰るんだ」

「何を言っている!何故戦火を広げる!神の使いの指示か!?」


「そうだね。神の使い様のご指示だよ」

「兵達に何をした!」


「神の使い様がくださった「龍の顎」と言うアーティファクトの複数持ちを可能にするアーティファクトを全兵士に持たせた。これで兵達は格段に強くなったから半数をイースト侵略に当てる事が出来たんだ。しかも限界を迎えるとああやって悪魔化をして最後までノースの為に戦ってくれるんだ」

「何を言っている!ノースの王族としての矜持はどうした?民達を守ってこその王族だ!民を犠牲にしてどうする!」


必死なアーイの表情に嬉しそうにしつつ悲しそうな顔のザンネが「アーイ、君ならそう言うと思ったから城に帰れと言ったんだ。神の使い様もアーイを危険視している。城でカーイと仲良く俺の帰還を待てばいい」と言った。


アーイが信じられないと言う表情で「ザンネ!」と言った時、横のガクが「やめときなアーイ。コイツには何を言っても無駄だ。ここで俺達が倒して戦争を終わらせるんだ」と制止した。


「やあ最終王子。君まで来てるなんてね。君やアーイは弱くはないが俺よりは弱い。負けを認めてウエストに帰るといい」

「バカ言うな、今も俺の仲間達は死力を尽くしている。アイツらが待ってるのにみっともない真似できるかってんだ」


ガクはそう言うと腰にさしたロングソードを二本抜くと「行くぜ?」と言ってザンネに斬りかかる。


ザンネは突剣を抜くとガクの剣を逸らす。

「オラァ!」

「ふふっ」


このまま始まる乱打戦。

だがガクが1度に4回切り込めたとして1度同士ならばザンネも4回だが2度目にはガクが8回でザンネは9回になる。


ガツガツと剣が当たりながらもガクだけが傷ついていく。

そんな中、アーイも参戦する。

アーイはショートソードを二振り持つと舞うように斬りかかる。

ザンネは2人相手でも何とか耐え凌ぐ。

だがここで異変に気付く。

ガクの剣が当たってもザンネは血を出すこともなく無反応だった。


それを見ていたキヨロスは「ちっ、アイツも「龍の顎」を着けてる?」と言い「マリオン、ダメだ。跳ぶしかない!」と声をかける。


「どうするの?」

「とりあえず10日前に跳んでノースより先に攻めるか…」


「ううん。その前にあの2人を助けて事情を聞こうよ。もしかしたら何か見えるかも!」

「了解だ。マリオン、使うぜ?」


キヨロスの使うぞは本気でアーティファクトを使う事。

マリオンは諦めの雰囲気で「うん。やるしかないよ」と言った。


「頼むぞ!12匹の鬼達よ!【アーティファクト】!」

キヨロスが出した光の剣達は一気にノースの兵達を斬り裂いていく。


「灰色くらいならやれるぜ!マリオン!アーティファクト砲でアイツの援護をしつつ回収すんぞ!」

「了解!」


マリオンがアーティファクト砲を放つとザンネは反応して回避する。

その隙にキヨロスが光の剣でザンネを追い立てる間に位置的にキヨロスはアーイを、マリオンがガクを抱えて高速移動で距離を取る。


アーイは邪魔された事に「何をする!?」と怒るがキヨロスが「いいから来い!何がどうなってこうなった?説明出来るか?」と聞く。


「何を?」

「いいから!名前!私はマリオン!あっちはキヨロス」


「…俺はウエストのガク、こっちはノースのアーイだ」

「え?ウエストとノースは戦争してんじゃないの?」

驚くマリオンにキヨロスが「ちっ、マリオン!あの野郎が追いかけて来た」と言う。


マリオンが「え!?なんで?」と言って振り返ると確かにザンネが高速移動を使って追いかけてくる。

ザンネは声が届く範囲で「ふふふ、神の使い様に「瞬きの靴」を貰っていたんだよ」と言いながら猛追してくる。


「マリオン!俺が光の剣で牽制するから情報をまとめるんだ!」

「バカ!使いすぎだよ!アンタ!ルルに残りわずかだって言ったよね?」


キヨロスはマリオンに黙っていた魂が残りわずかな事が知られていた事で直接話したルルを思いながら「ちっ、ルルのやつ」と悪態をつく。


「私は感覚強化で聞いたんだよ!ルルは関係ない!」

「とりあえず俺が相手するからマリオンは聞き出せ!えっと…アーイだっけ?邪魔すんなよな」


「邪魔とはなんだ!」

「いいから大人しく掴まってろ」

アーイを抱いたキヨロスとザンネの戦闘が始まる。


ザンネは驚異的な剣速で光の剣を撃ち落としていく。


「んだコイツ!?」

「ザンネは天才剣士!あのくらいならば防ぐ」


敵であるにも関わらず何処か自慢気に話すアーイの鬱陶しさにキヨロスが「ちっ、どうせ後で殺すから今は本気出したくねぇ…」と言った。

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