第21話 ノース/ウエストガーデン03。

キヨロスとマリオンはイーストとノースの国境に着いた。

既にルル達の通達が回っていて、キヨロス達はすぐに通される。


キヨロスは門が開くまでの間に横に立つマリオンを見て「マリオン、良かったの?」と聞く。

マリオンは何度もされている話に「またその話?良いんだって「時のタマゴ」が解脱したらルルに頼むから良いの。それにやり方がわかったんだからいいんだって」と返す。

キヨロスはマリオンの人間化に目処が立ってからはずっと半身半人で良いのかと聞いてくる。


キヨロスはサウスでリーン、フィル、ジチ、そしてマリオンから好意を寄せられたが誰も選ばなかった。

キヨロスから選ばれた女子は「誓いの指輪」によって魂の共有を行いキヨロスの尽きかけた魂を補填して解脱を目指し生涯を共にするというものだった。

キヨロスが誰も選ばなかった代わりにマリオンが自身は人形だからと立候補をしてキヨロスと魂を共にしている。


仮に尽きかけても次のマリオンを用意して共有すればキヨロスは理論上無限の魂を得たことになり、魂を消費する4つのS級アーティファクトを普通に使うことが出来る。


だが心ある人間ならばそんな非人道的な事は認められない。

現にキヨロスはマリオンを1人の少女として扱い、魂の浪費を良しとしていない。

この旅もマリオンの人間化の道を探すという名目があるからマリオンの同行を認めていたがイーストでルルの用いた「転化の水」でマリオンは人間になれる事が判明した。

だがマリオンはキヨロスの「時のタマゴ」を解脱するまで人間にはならず半身半人の道を選んだ。


キヨロスの肩にとまったトキタマは「お父さん、僕も頑張って解脱しますからね!」と声をかけるとキヨロスも笑顔で「うん。よろしくねトキタマ」と返す。

別にトキタマの呪いに関してはトキタマに罪はない。アーティファクトとして問題点があるのは仕方のない事で、責めるべきではないし、現にトキタマには何回も助けて貰っている。


「所でお父さん、この門の先はよくない感じですよ?」

「良くない?」


「敵だらけです」

「まさかノースの侵攻?」

「ルルの言ってた奴?早すぎない?」


キヨロスとマリオンは兵士にイーストの城に行ってルル達に敵襲が考えられると報告に行かせる。


「僕達が門を抜けたら門を閉じてください」

「とりあえずやれるだけはやるからさ」


この言葉に兵士は礼を告げて1人がイーストの城へと走り出す。


「マリオン動ける?」

「そのための訓練だったんだよ?大丈夫!100人くらいまでならイケるって」


そう言っている間に開かれた門の向こうには500の兵士が突撃の用意をしていた。


「マリオン?」

「……200まで頑張る」


マリオンは途方に暮れた顔をしながら兜を装着し、キヨロスは剣を抜く。


「よろしく。僕は残りを頑張るよ」

「最悪突破されても100ならルルとツネツギとテツイでなんとかなるよ」


「直接城を目指すなら良いけど途中の村とか襲われると困るよ」

「確かに」


キヨロスとマリオンは前に出て真意を問うが兵士たちはろくに話をしない。

まるでサウスの城に居た「支配の王灼」で管理されている兵士と同じ風に見えた。


その中で唯一会話が出来たのはザンネで「君達はイーストの人間かい?イーストはノースが滅ぼす事になったから死んでくれるかな?」と言って兵士をけしかけてきた。


こうして始まった戦闘。

驚く事にノースの兵士はサウスの兵士では太刀打ち出来ない強さだった。

全員がアーティファクトの複数持ちをしていて「兵士の剣」「回復の指輪」そして火や氷、雷などの指輪を装備していて適宜攻撃をしてくる。


「マズいって、強いよコイツら!」

「ちっ!マリオン!無理すんな!」


ノースの兵士が強敵という事で早々に荒々しいキヨロスが出てきて剣を振るう。

マリオンはそれを心配して「敵の数が多いから今から本気は出さないでよ!」と声をかける。

2人のコンビネーションも見事になっていてキヨロスの隙をマリオンが補い、マリオンの隙をキヨロスが補っている。


「了解してる!【アーティファクト】!」

キヨロスの振り下ろしは兵士を捕らえたが倒せない。

血も出さずに吹き飛んでゴロゴロと草原を転がる兵士を見てキヨロスは「なんだこの硬さ…。サウスの王みたいだ…」と呟く。


その時、草原を転がった兵士の右手がぐにゃりと動くと全身を飲み込む。

キヨロスが「まさか!?」と言った時には兵士の身体は右腕に飲まれて悪魔の姿になる。


「「龍の顎」だと?」


驚くキヨロスにザンネは「へぇ、君は「龍の顎」を知っているんだね。そうさ、ノースの兵士は皆「龍の顎」を装着してアーティファクトの同時使用を可能にしたんだ!」と言う。


「ヤバいって、アイツの話が本当ならここの奴ら全部悪魔化するよ!?」

「まだ色は死にかけの灰色だからなんとかなると思うが倒せるのは限られてくる…くそっ。とりあえずギリギリまではこのまま戦う。マリオンは俺から離れんな!」


再びキヨロスが斬りかかる。

マリオンが相手をしていた兵士も悪魔化をすると襲いかかってくる。


それでもキヨロスとマリオンは善戦している。

悪魔の猛攻は物ともせず斬りかかる。


高みの見物を決め込んでいたザンネは10の兵士が倒された所で「イーストの兵よ!よくやるね!諦めて道を譲ることだ!」と言ってくる。


道を譲ると言って横に避けた所で意味はない。この場合の「道を譲る」は死を意味している。

そしてザンネはそう言いながらも次々と兵士を送り込んでくる。


あえて言えば悪魔化する兵士を倒せるキヨロスとマリオンをザンネに見逃す気はない。


「ちっ!ウゼェ!なんで国境抜けてすぐに戦闘なんだよチクショウ!」

悪態をつきながらも悪魔を斬りつけると悪魔は霧散し、次の兵士が斬りかかってくる。


キヨロスは悪魔化の前になんとかならないかと思い右腕を狙うが「革命の剣」の切れ味を持ってしても「龍の顎」を破壊できない。


「ちっ!なんで「龍の顎」がこんなにあるんだよ!」

「最悪サウスに戻って神の使いに聞いてみる?」


「さもなくば10日前にしてルル達連れてくるか?」

「集まるタイミングで門ごと焼いちゃえば話早いかも」


談笑まではいかないがそんな話をしながら続々と襲いかかってくる兵士を殺し続けていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る