第18話 イーストガーデン14。
イーストの城は後始末に追われていた。
突如現れた黒い悪魔との戦闘で城はかなり傷ついていた。
キヨロス達が目覚めたのは翌日で御代とマリオンとテツイから細かい部分を聞く事となった。
ルルは起きると大臣のアインツ、イー、ウノと会い、顛末の説明をした。
ルルの存在は絶大で、説明を素直に受け入れてくれてウノ達はパーンの再来に驚き、テツイの寛解に感謝をした。
テツイの寛解を喜んだ事に「知っておったのか?」と聞くとウノが「ええ、相談を受けていました」と言った。
アインツが「それでこれからどうする?」と聞くとルルは「城勤に戻るのも良いのだがどうするべきか悩んでおる」と返した。
本来は4人はそう歳が離れていないのだがルルだけ若返っていて違和感がすごい。
ルルは今回のお礼としてマリオンを研究室に連れて行き、「転化の水」に入れた。
「本来なら完全に人になるまで入れてやるのが正しいのかも知れぬがキヨロスと繋がっているだけに全て人にしてしまうと戦いの時に2人とも死んでしまう。なので今は半身半人の状態が望ましかろう。マリオンも身体が変えられるからとキヨロスに売り込んだのも聞いていたしな」
「中途半端なの?」
「簡単に言えば「大地の核」が遠かろうが倒れない。そんな状態だ」
マリオンはルルの説明を受けながら手足を診たり周りをキョロキョロと見渡すと「確かにルルの声もよく聞こえるようになったよ」と言った。
「それは良かった。改めてキヨロスのアーティファクトが解脱をしたら来るがいい。人の身に変えよう」
「うん。ありがとう」
マリオンはルルに感謝を継げながらルルが人形と今の違いを事細かに聞いていた。
常継達は明日日本に帰ることになった。
勇者召喚の目的は「創世の光」の回収で無事に手に入ったので常継達はお役御免として日本に帰れることになる。
ルルの話では前例はないがおそらく「勇者の腕輪」を手放して「創世の光」を責任者のウノに渡せば召喚の光が起きて導かれる事になると思う話だった。
「マリオン、どうだった?」
「うん。ルルの力で半分人間になれたよ」
「良かったな。じゃあ後はキヨロスの解脱だな」
「それだよね、でも本当どうすれば良いんだろう?」
ここでトキタマが「お父さん、僕は中々の経験が出来ましたよ!」と言って喜んでいた。
和気藹々と話しながら迎えた日本帰還の日。
キヨロスは常継と御代に「会えて良かったよ。ニホンに帰っても元気でね」と見送ると常継が「キヨロス、御代の事は本当に助かった。ありがとう」と言って御代も「本当ありがとうございました」とお辞儀をした。
常継はルルの前に立って「ルルも助かった。ノレルやルノレ、ノレノレ達には伝えられないかも知れないが助かったと伝えてくれ」と言うとルルも「わかった。「創世の光」ではこちらこそ助かった」と言った。
そしてテツイの前に立つと「テツイ、キチンと困ったら仲間に言えよな。あと飯は旨かったぞ」と言う。テツイは嬉しそうに「ツネツギ様、ありがとうございました」と悪手をしてお辞儀をした。
最後に御代がもう一度「皆さん、お兄共々助かりました。お世話になりました」とお礼を言った。
式典が始まる。
イーストの王はルル曰く役立たずでバカなボンボン、テツイ曰く家臣に仕事を任せる寛大なお方らしくこの日も表立たずに全部をウノ達に任せている。
ウノが「勇者ツネツギ、勇者ミシロの活躍で「創世の光」が手に戻った事に感謝します!」と宣言をして常継の手から「創世の光」を受け取ると拍手が起きる。
「「勇者の腕輪」よ!勇者達を元の世界へ!」
この言葉で足元が光り身体が浮き上がる。
御代だけ。
「お兄!?お兄は帰らないの?」
「バカ!待てって!連れてってくれ!」
だが光に阻まれて常継と御代は手を繋げずにいる。
「お兄!お兄!」
「御代!」
御代がどんどん浮かび上がって徐々に手が繋げない距離になった時、御代が「お兄は元気に勇者してるって皆に行っておくね!」と言う。常継は「バカ!そんな与太話誰が信じるんだ!?」と返した時、御代は消えた。
いたたまれず誰も常継に声がかけられない。
シンとする部屋の中で常継が「何でだよ!「創世の光」は取ってきたぞ!?何で俺は帰れない!」と叫び出す。
そこに申し訳なく手を挙げたテツイ。
「んだよテツイ。お前にわかんのか?」
「多分…もしかしたらの話です…。もしかして「創世の光」を回収する勇者がミシロ様だったのでは…」
この質問に常継が「はぁ?」と返すと横でルルが「ふむ。テツイは「創世の光」回収の勇者がミシロでツネツギは別の目的の為に呼ばれた勇者だと言いたいのだな」と言った。
常継は置かれている「勇者の腕輪」を指さして「ルル?だが「勇者の腕輪」は俺が装備出来たんだぜ?」と返すとテツイが「…ミシロ様は試着なされてません」と言った。
「……あ…。じゃあ何か?御代の奴も「勇者の腕輪」は装備出来て奈落に降りて「創世の光」を手に入れられたと言うことか?」
「おそらく…」
「そうなるな」
「じゃあ俺は何したら帰れるんだよ!米が食えると思って楽しみにしてたんだぞ!」
「コメ?それは何ですか?」
「ニホンの食べ物か、残念だったな」
グダグダで終わった式典だったがウノ達とルルが話し合った結果、「創世の光」をルル1人では使えない以上常継の存在は希有としてこれからもイーストで手厚くもてなす話になった。
そして「勇者の腕輪」は常継を使用者と認識して再装着することが出来たし成長度も変わらなかった事はありがたかった。
式典後、雑務を片付けているルルの元にキヨロスが行って「ルル、少しいい?」と話しかける。
「キヨロス、どうした?」
「僕達はトキタマに更なる経験をさせたいからもう少ししたら旅に出るよ」
「旅?サウスに帰らないのか?」
「うん。ノースに行こうと思う。だから国境の兵士に一言お願いしたいんだ」
ルルは表情を曇らせて「…ウノから聞いたがノースにはいい噂がない」と言う。
「いい噂?」
「西のウエストと戦争状態で更にイーストに攻め込むための軍備増強をしていると言っていた」
「戦争…」
「どうする?それでも行くか?逆に攻め込まれているウエスト側から入ってウエストから見てみてはどうだ?」
ルルの提案にキヨロスは申し訳なさそうに「…ありがとうルル。でも僕にはウエストまで歩く時間も「瞬きの靴」を使う余裕も無いんだ」と言った。
この言葉に真っ青な顔になったルルが「…何?まさかキヨロス…魂が…」と言ってキヨロスの魂が残り僅かな事を確認する。
「うん。随分使っちゃった。マリオンが一緒に背負ってくれてるからまだ戦えるけどもう僕に猶予はない」
申し訳なさそうに説明をするキヨロスにルルが「済まぬ…イーストの問題で…」と言って頭を下げる。
「仕方ないよ。悪魔を放置しててイーストからサウスを目指されたら真っ先に狙われるのは僕の故郷だもん」
「…わかった。だが内偵を送ったり許可を取ることもする。そしてマリオンのアップデートも済ませるから少しイーストの客として暫く居てくれ。後はキヨロスが居なくなるとツネツギが荒れるから居てくれ」
この話にキヨロスは「…うん。わかった」と返事をした。
ルルはウノ達に功労者のキヨロスの願いを尊重する形でノース行きを認めさせた上にノースを見てくる役目を形骸的に与える。
そしてマリオンの鎧に含まれていた擬似アーティファクトを人工アーティファクトに置き換える。
「マリオン、作業は半日で終わったが慣らし運転が必要になるから奈落で訓練をしてくれ。
注意点は「大地の核」に依存しない分、最大出力は敵わない。マリオンの疲労も無いが最大速度やその他の面でも理想と現実の乖離が現れる。訓練で確かめてみてくれ」
「ありがとう。継戦能力が増えたなら感謝だよ」
こうして45日の訓練を経てキヨロスとマリオンはノースの地を目指した。
常継はついて行こうかと提案をしたがキヨロス達は「戦争だから危ないよ。ツネツギは人は殺したくないよね?ミシロがニホンは平和な国って言ってたよ」と言って諦めさせた。
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