第14話 イーストガーデン10。
テツイの胸についていた「悪魔のタマゴ」は恐らく試作品だから外せると言うルルの見立てで除去を行う事になった。
除去を行いながらテツイを倒してから死んだ御代の前に現れたメイド服の女の話をキヨロスから聞いたルルは「ちっ、キヨロスの言った女は恐らくパーンだな」と言った。
「パーン?」
「かつてイーストに「創生の光」を授けた女だ。地下の実験室まで見つけて人工アーティファクトと人とアーティファクトの一体化を学んで行くとは憎らしい奴だ。
まあ話はテツイに戻そう。
単純に人工アーティファクトの破壊で逃げられないように一体化を行なっている。
これでは仮に破壊可能でも宿主が死ぬ」
「うん。テツイは死んだんだよね」
「何?キヨロス?何を言っておる?」
「僕の「時のタマゴ」で時を跳んだからテツイは生きてるけど1度破壊したら死んだんだよ」
「ん?そう言えば「革命の剣」と言っておったが、それに「時のタマゴ」?お前のアーティファクトはなんだ?」
「え?「革命の剣」「万能の鎧」「瞬きの靴」そして「時のタマゴ」だよ」
キヨロスが剣、鎧、靴、そしてトキタマを指さして説明をするとルルが目を見開いて「…全部S級じゃないか!?どうやったらそんなに持てる?それに問題点はなんだ!?」と食い気味に聞いてくる。
ここでキヨロスはどのアーティファクトも魂を消費する事、そして「時のタマゴ」の使いすぎで魂の残りがない事でマリオンと命を繋げている事を伝えた。
「成る程な、確かにS級の攻撃力ならば可能だろう」
ルルはアーティファクトとの一体化を止めると「キヨロス、破壊してくれ。もしかするとこれは手を離れた途端に襲いかかってくるやも知れぬ」と言う。
穏やかな顔で「了解だよルル」と言ったキヨロスが急に睨みつけるようにテツイの胸の「悪魔のタマゴ」を睨んで「行くぜ!最初から本気で破壊してやる!」と声を荒げた。
マリオンは「おお、一発目から?」と言って喜ぶ。
ルルが引き気味にマリオンに「マリオン?なんだあのキヨロスは?」と聞くとマリオンはニコニコ笑顔で「んー、アーティファクト使ってるとああなるんだよ」と言う。
そのキヨロスは高笑いをしながらテツイの左胸に「革命の剣」で出した光の剣を向かわせるとあっという間にパキィィィンと言う綺麗な音の後で「悪魔のタマゴ」は粉々に砕け散った。
常継が「テツイ!」と名を呼んで駆け寄るとテツイは「い…生きています」と返事をした。
その姿にルルが満足そうに「よし、成功だな」と言う。
テツイは皆に礼を言うがやはり思い入れの差なのか常継の手を取って「ありがとうございます」と礼を言った。
常継も嬉しそうに「いや、「創世の光」も手に入ってテツイも助かったなら俺は日本に帰れるな!俺はやったぞ御代!後で小屋に行って喜ばしてやらないとな!」と言う。
これはルルからしたら不思議なことだった。
S級アーティファクトの持ち主ならガーデンでは不自由はしない。
それなのに帰りたいと言う常継に「なんだ、ツネツギはニホンに帰りたいのか?」と聞くと常継は「当たり前だろ?俺はとにかく妹の御代を連れ帰るために奈落で傷だらけになってたんだぜ?」と言って頬や腕を指さした。
「傷なんて無いではないか」
「それはキヨロスが時を跳んで無かったことにしてくれたんだよ」
ルルが「信用ならぬ」と返して常継が「酷え」と返し、キヨロスとマリオンが笑う。
全てが片付いて気持ちが緩んでいると…「よくもやってくれたわね」と聞こえてきた。常継達が振り返るとそこにはメイド服の女…パーンがそこに居た。
「パーン!?」
「久しぶりねルルさん。昔会った時より若返っちゃってまぁ。それによくあの曖昧なメモ書きから成功したわね?」
パーンは若干苛立った顔をしながらもルルと話をする。
その口調は古い知り合いに向ける口調だった。
「お前こそ何故姿が変わっていない!」
「ふふ。秘密よ。それにしてもそこの子の「悪魔のタマゴ」を破壊するなんて思わなかったわ」
ここでパーンの空気が変わり部屋の温度が下がった気がする。
全員、身構えながらルルの出方を待つ。
「それで?何をしに来た?」
「ふふ、本当は数日前からそこの子の孵化を待っていたのよ。それを急にルルさんが来て嫌な予感がしてみたらコレよ。腹が立つから…2個目と3個目の「悪魔のタマゴ」を使ったの」
そう言ったパーンが「いらっしゃい」と言うと悪魔化を済ませた狼と…御代が現れた。
「御代!?」
御代はかつてテツイが悪魔化する直前と同じ顔をしている。
「ふふふ、今付けたばかりだからまだ孵化しないけど2個目と3個目は何年も待たず、すぐに孵化するわよ。ルルさんが取り外すにしても私も狼くんも居る。出来るかしら?」
その悪意に満ちた顔にキヨロスが「ちっ…、仕切り直すぞツネツギ!」と声を張る。
パーンは嬉しそうに「あら、そんな暇与える訳ないし、孵化したら助けられないわよ?あはははは!」と笑う。
キヨロスがパーンを無視して「トキタマ!」と声をかけるとトキタマは「はいです!」と言って飛びあがると大きさに見合わない翼を広げた。
パーンがトキタマの正体に気付き「まさかその鳥!?」と言った時、キヨロスは「お前は連れて行かない!【アーティファクト】!」と言って時を跳んだ。
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