第10話 イーストガーデン06。
奈落に入るという事は戦闘になるという事でマリオンがやや困り顔で「あ、この中で雷の擬似アーティファクトを装備できるのって誰かな?」と言って見渡す。
「マリオン?どした?」
「…私の身体は特別なの。だから雷の擬似アーティファクトか雷のアーティファクトからこの鎧に雷を補給しないと戦えないんだよ」
マリオンが腰の筒を指差しながら説明をすると常継は「成る程。だが俺の「勇者の腕輪」は他のアーティファクトを寄せ付けないからダメだな」と言いテツイは申し訳無さそうに「僕も「悪魔のタマゴ」が育つのでダメです」と言う。
「じゃあミシロだ。悪いんだけど雷の指輪をつけて私の腰に雷を送ってくれないかな?」
「うん。やってみるね。こうかな?【アーティファクト】」
御代は少し照れくさそうに指輪を装着して雷を出してみると無事に出たことに感動をする。
少しの時間だったが十分に補充が出来たことでマリオンは「ありがとう、これで戦ってこれるよ」と御代に感謝を言い、御代も「帰ってきたらまたやるね」と笑顔で応えた。
テツイが手を回してくれてキヨロスとマリオンは常継のチームとして編成されたので奈落に入ることが出来た。
マリオンが周りをキョロキョロと見渡して「やっと奈落だ」と言う。
その横でキヨロスが「ここにあるといいね」と話している。
「そういえば何探してんの?」
「秘密」
「うん、まあ秘密かな?」
「んだそれ?まあいいや。出たぞ、人喰い鬼だ。この頃の俺は死に物狂いで戦ってたんだ。悪いが危なかったら参加してくれ【アーティファクト】」
常継は青い光の剣を出して力一杯振り抜くと人喰い鬼は簡単に真っ二つになる。
思った結果と違っていたのだろう、振りぬいた格好のまま「あれ?」と言う常継。
そんな常継を見てマリオンとキヨロスが「ああ、わかってないんだね」「そうだね」と言って勝手に納得している。
常継は自分の状況がわからないのも、キヨロスとマリオンだけがわかっているのも面白くない。
「なんだよ?教えてくれって、キヨロスと居ると強くなるとかか?」
「大体当たりだよ。コイツは時を跳ぶ時にツネツギの記憶だけじゃなくて経験まで飛ばしたんだ。だからツネツギは34日後の強さで今日に戻ってきたんだよ」
この説明に両腕の「勇者の腕輪」を見た常継が約50日間を思い出しながら「マジかよ…」と言ってキヨロスの顔を見る。
キヨロスは「本当だよ。まあ僕も戦ってみるかな?」と言うと人喰い鬼に斬りかかってみる。キヨロスの剣でも人喰い鬼は簡単に斬り裂けた。
それを見た後でマリオンも斬り付けると人喰い鬼を容易く斬り裂いた。
「なんだ、こんなもんか」
「じゃあ道はツネツギが覚えてるからさっさと進んじゃおうよ」
キヨロス達は一気に地下15階まで降りる。
道中、常継に聞くとまだ外では15階は未踏の地で、迷うことなく階段を目指して、こんなに早く降りていく姿に他の冒険者達が化物を見るように見てきていた。
地下15階は狭いフロアだが普通にダンジョンでこの中にそのノレルとノレノレと呼ばれた少女が居るイメージがわかない。
「ツネツギ、ノレルとルノレはどこに居るの?」
「この壁の向こうだぜ!」
常継はそう言うなり壁を切り裂いて中の部屋に入る。
中は石張りの部屋だった。
「こんな部屋をどうやって見つけたの?」
「あ?ああ、蜥蜴人間の野郎と戦ってて壁に剣が当たった時に見つけた。しかもこの壁もなんなのか人の気配がなくなると直るんだよ」
確かに壁から少し離れると石が集まって再び壁になる。
部屋の中に入ると巨大な水槽で眠る2人の少女が居た。
水槽に向かって常継は「来たぜ、ノレル、ルノレ」と話しかける横で真っ赤な顔をしたキヨロスが「ツ…ツネツギ!?裸だよ、早く服を着させてあけないと!」と言って卒倒している。
「なんだキヨロス。純情くんか?」
「ツネツギ、ジロジロ見ちゃダメだよ!」
別に常継はジロジロ見ているわけでもなく普通にしている。
普通に目の前に水槽があって、そこの中には2人の少女が浮いている。
目を逸らすこともジロジロ見ることもしていない。
それだけだった。
「あ、そう?じゃあマリオンはそこの箱から服を出しておいてやってくれよ。青っぽい服をノレルが赤っぽい服をルノレが着るから」
常継は指示を出すと器用に水槽の縁に立ってまずはノレルを拾う。
「キヨロス、パス」
「え!?」
突然、水槽の淵からノレルを渡されそうになったキヨロスは固まってしまい何も出来なくなる。
それを見て常継が「触っとけって」と言って笑いかけるとキヨロスは「ダメだよ!」と返す。
常継は「役立たねえ奴」と言いながら手際良くノレルとルノレを助けるとタオルで身体を拭き上げて起きるのを待つ。
「起こさないの?」
「起きねえんだよ。なんかこの水のせいで効果が切れるまで何やっても寝てやがる」
しばらく待つとノレルとルノレは目を覚ました。
そして常継を見て「ツネツギ」「おぉ、ツネツギだ」と言う。
「お前達…記憶が…」
「ああ、あるな。ノレノレの中で歯痒い思いをした記憶も、ノレノレが己の無力さを呪った事もわかる」
「今度こそルルになろうね!」
これにマリオンが「話が早くて良かったねツネツギ」と言うと「ああ」と言った後で何かに気付き「あ…そうだ。キヨロスに頼もう。ここにルルのメモがあるんだよ。読んでくれね?」と言った。
「何で?って君はニホンの人だから読めないのか…」
キヨロスは納得をした顔でメモに手を伸ばす。それは日記のような本だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます