第8話 イーストガーデン04。

常継は気付くと小屋にいた。

今日が何日目かはわからないが人喰い鬼に殴られて出来た右腕の傷がない。

鏡を見ると首狩りカマキリに斬られた頬の傷もない。


「マジかよ…。本当に34日前?」

唖然とした常継はすぐにはたと気付いて「御代!」と名を呼びながら城に入ると御代は城の一室で毒によって眠っていた。


「生きてる…」


常継はそれだけで目に涙を溜めて喜ぶ。


「ありがとうキヨロス」

ここにいないキヨロスにも感謝を伝えていると「あ、ここにいらしたんですね。おはようございます。朝ごはんできてますよ」とテツイが顔を出してきた。

目を見開いて「テツイ!!?」と言ってしまう常継に「はい。おはようございます」と微笑むテツイ。


テツイからすれば何も変わらない日常の朝。

キチンと挨拶をしたテツイだったが、直後駆け寄った常継が「てんめぇ!!喰らえ怒りの鉄拳!」と言ってフルスイングでテツイを殴り飛ばした。


突然殴り飛ばされたテツイは何がなんだかわからず、されるがままにボコボコにされると小屋に連行される。

テツイは連行中も必死に「突然なんですか?」「やめてください」と言うが常継は止まらない。


小屋に行くとキヨロスとマリオンと解毒のアーティファクト使いだろう、1人の美女が居た。


「ツネツギ!妹さんは?」

「今見てきた。毒で寝てる」

そう言いながらテツイを一度見て「先に御代から頼む」と言う。


「うん。フィルさん、頼めるかな?」

「ええ、任せて」


この状況がわからないテツイは「ツネツギ様、そんな無関係な人間を城に入れるなんて」と言ってるが常継は「ほほう、殴られたりないか?」と脅すとテツイは何も言えなくなる。


御代の毒は驚く程完璧に治る。

ルノレの解毒でも解毒から回復までは何日もかかっていた。

それなのに御代はすぐに目を開けて起き上がる。


常継は「御代!」と涙ながらに声をかけると、御代は「おにい?どしたの?泣いちゃってんじゃん」と変な顔をする。


「バカヤロウ!お前一度死んだんだよ!それをこのキヨロスがなんとかしてくれたんだよ!それで本来ならまだ10日くらい毒で苦しむのにフィルさん連れて来てくれたからこうして治ったんだよ!」

荒唐無稽に聞こえる説明なのだが御代は「はぁ?なにそれ?時間跳躍的な奴?」と素直に受け入れて聞き返す。


「それだ!それ!だからキヨロスには海よりも深く感謝しろよな!」


常継は変な嘘はつかない。

本当だと信じた御代はベッドから降りるとキヨロス達に頭を下げて「伊加利御代です。助けてくださってありがとうございます」と言った。


キヨロスは優しく微笑むと「ううん。僕達も助けられて良かったです」と言い、マリオンが「本当、後はテツイに殺されないようにしないとね」と言った。


テツイと言われた御代が「テツイさん?そう言えばなんでそんなにボコボコにされてるの?」と小屋に転がされたテツイに話しかける。

テツイが話す前に常継が本気で怒った顔で「コイツが大嘘つきの敵野郎だからだよ」と言い放つ。


テツイは思い当たる節がないといった顔で「ツネツギ様?僕はそんな…」と言ったのだがマリオンが「へえ、左胸…見せてよ?」と話をさえぎりながら前にでる。


マリオンに迫られて真っ青になるテツイ。

キヨロスは「自覚ありですね…」と言ってマリオンの横に立つと「あなたは約30日後に左胸の「悪魔のタマゴ」のせいで悪魔化をする。そして城の人間を片っ端から殺して回る。心配してくれたミシロさんまで巻き込むんだ」と説明をした。


30日後の話と突然言われたのにテツイは疑うことなく受け入れると「そ…そんな…間に合わなかった…」と言って力なく崩れ落ちた。


そして全てを語った。


約5年前、突然目の前に現れた女に襲われて左胸に真っ赤なアーティファクトを取り付けられた。

女が言うにはアーティファクトは「悪魔のタマゴ」、テツイを養分に育ち、最後には悪魔化をすると説明をした女は付け足すように「アーティファクトを使うとその分「悪魔のタマゴ」が育つからと言い、自死も「悪魔のタマゴ」が防ぐと言う。


実際に試したのだろう。テツイは「僕は死ねませんでした」と肩を落として言った。


「姉さん達を襲う前に死にたかった。だからこそ「創世の光」で僕自身を焼き払って貰いたかった」


「なんだそれ?」

「16日前、ツネツギ様とミシロ様をお迎えした日、僕の前に再びあの女が現れました。そして僕の「悪魔のタマゴ」は順調に育っていて孵化寸前。最早猶予はないと言いました。絶望する僕に、あの女は死に方なら教えると言い…」


「「創世の光」で自分を焼き殺す事を勧められた?」

「はい。そして城に来たあの女はツネツギ様達にやる気を出してもらう為と言ってお食事に毒を入れました」


一瞬の間の後、当初は城のアーティファクト反対派の過激な行動と思っていた毒が謎の女の仕業と知った常継と御代は「はぁぁ!?」「えぇぇ!?」と声を大にして驚く。


「あの女の言った通りツネツギ様が死に物狂いで奈落を攻略してくださっていたので僕は間に合うと思っていました」


だが間に合わないと知って切望をするテツイにキヨロスが「まあいいや、大体分かりました。僕は前の時間で「悪魔のタマゴ」を破壊したからやってみますから服を脱いでください」と言う。


「破壊?」

「「龍の顎」くらいのアーティファクトなら壊せます」


「龍の顎」を知らないが、キヨロスの自信にテツイは縋るように「お願いします!」と言った。


キヨロスは頷くと「「革命の剣」!【アーティファクト】」と言う。この言葉で出た光の剣が服を脱いだテツイの左胸を目指した。

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