第7話 イーストガーデン03。

突如現れたメイド服の女の佇まいが気になったキヨロスが「あなたは?」と声をかけるとメイド服の女は「ふふ。私の事は秘密よ。でも悪魔が倒されていたからご褒美に少しだけ教えてあげる」と言う。


それならばとキヨロスが「この状況は?あのテツイって人は何者ですか?」と聞いてみるとメイド服の女は「あははは。あなた変わっているわね。この状況でもそんなに落ち着いているのね。あれは人工アーティファクト「悪魔のタマゴ」で悪魔化した姿。テツイって子はアーティファクトの才能に溢れていた男の子よ」と説明をした。


「詳しいですね」

「ええ、まあね」


「あのノレノレの失敗って何ですか?」

「あははは。元はイーストの天才アーティファクト使いのルルって子が居たのよ。でもイーストは大破壊でアーティファクト不要論に舵を切り、ルルはいらなくなった。

でもルルは奈落の奥で研究の日々を送る。

いずれアーティファクトを求める者が現れた時に見つけてもらえるようにね。

そして有り余る時間でルルは一つの計画にでたのよ」


正直この詳しさはおかしい。

キヨロスはそう思いながらもメイド服の女に質問を続ける。


「計画ですか?」

「ええ、1人で全属性のアーティファクトを使いこなすの。その為に身体を2つに分けて、1人を攻撃が得意なノレルに、もう1人は回復や補助が必要なルノレにしたの」


「そんな事が?」

「あら出来ないなんて思う?アーティファクトの可能性は無限大よ。話を戻すと地下15階の実験室にメモがあったけどきっとわかりにくいわよね。あなた、アーティファクトが成長するのは知ってるかしら?」


「知ってます」

「ふふ、ノレルとルノレは言わばアーティファクトと同じなの、成長させてから人工アーティファクトで合身すればルルに戻れたはず。

経験不足だったのよ。だからノレノレになったのね。ルルならノレルの特性とルノレの特性をその身に集められた」


「逆だから何もできない?」

「そうなるわね。まあ、見るものも見れたし帰るわ。【アーティファクト】」

メイド服の女はなんらかのアーティファクトを使うとその場から消えた。



何がなんだかわからないがキヨロスは一つのことを決めていた。

マリオンはそれを察して「跳ぶの?」と聞く。


「うん」と応えたキヨロスは「まだ完全解決の筋道が見つかってないけど跳ぶよ」と言ってトキタマを呼ぶ。トキタマが嬉しそうに「はいはーい!」と現れるがマリオンが「ちょっと待って」と言うと今も御代の亡骸を抱きしめて泣く常継に強めに「ツネツギ!」と声をかける。


「…マリオン…?」

「ほらメソメソしない!」


「バカヤロウ…、妹が死んだんだぞ?それもこんなわけわかんない世界でだ…チクショウ…」

そう言って再び常継が泣き始めるとマリオンが「助けてくれるってコイツが言ってんだから協力くらいしなさいよ!」と言った。


「え?」と聞き返す常継と「マリオン?」と真意を問うキヨロス。

マリオンがキヨロスに「無闇矢鱈に跳ぶのは禁止、とりあえずツネツギと話すの」と言って常継に「ツネツギがガーデンに来て何日?」と聞くと常継は指折り数えて「50日になる…」と応えた。


「…ダメだ、それだと僕がトキタマを授かる前になる。サウスを片付けて、出発した日は34日前だ。ツネツギの34日前は?」

「…多分まだ15階にも辿りついてない」


「…わかった。今から僕は僕のアーティファクトで34日前に戻る。朝一番に小屋に居る?」

「いや、起きるとすぐに奈落に降りていた」


「じゃあツネツギがする事は妹さんとテツイさんを小屋に呼んでおく事だよ。僕は解毒のアーティファクト使いも連れてくる」


この言葉に救いを見出した常継が「本当か!?」と聞く。

キヨロスは「うん」と頷いた後で少し困った顔で「でもまだ完全解決の筋道が見えてない。なんだろう…。いいや、とりあえず跳んで妹さんを助けよう」と言った。


「いいのか!?助かる!」

「ツネツギ、コイツのアーティファクトは全部魂を使うんだからね」


「…あ…」

「仕方ないって、気にしないで…。とりあえず僕もこの状況は嫌だ」


常継が「済まない」と感謝を伝えたところでノレノレが話に参加をする。


「待って!」

「ノレノレ?」


ノレノレは悲しげな表情で「ノレノレは失敗だからもう会えないけど…」と言った後で目に涙をためて「ツネツギ、失敗のノレノレと居てくれてありがとう。ノレノレはルルになりたい。それで皆を助けたいよ!」と言った。

常継は優しい笑顔で「ノレノレ…。おう。期待してっからな」と応える。

その姿を見たキヨロスは「僕はその想いも連れて跳ぶ。次は成功させよう」と声をかけた。


マリオンは心配そうに「1人増えてんのにいいの?」と確認を取るとキヨロスは「ああ、僕は跳ぶ。トキタマ!」と言ってトキタマを呼ぶ。

トキタマは使ってもらえることが嬉しくて「はいはーい!」と言ってキヨロスの肩に乗る。


トキタマを見た常継が「鳥?」と言ってマジマジと見て、ノレノレが「美味しそう」と言う。


トキタマは慌てて「僕は食べられませんよ!」と注意するとキヨロスは「あはは

」と笑ってから「行くよ!34日前の朝!跳ばすのはマリオンとツネツギとノレノレだ!【アーティファクト】」と言って時を跳んだ。

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