第6話 イーストガーデン02。

常継はキヨロスとマリオンを連れて城に戻る。

正確には城の敷地にある離れの小屋に戻る。


「俺が妹と暮らしてる小屋だ」

そう言いながら扉を開けると常継は「おーい!テツイーっ!帰ったぞー!飯だ!飯の時間だぞー!」と声を張り、ノレノレも「メシだー!」と言って「二ヒヒヒ」と笑う。


だが小屋は無人でシンとしている。

「あれ?御代?テツイ?」

「ミシロは逢引かー?」


常継は不在の妹とテツイを気にするとノレノレが逢引を疑う。

この言葉に常継が「バカヤロウ!御代の好みはガチムチでテツイみたいなヒョロモヤシじゃねえよ。んだ?腹減って城に入ったのか?」と言った時、マリオンが「悲鳴…沢山聞こえるよ」とキヨロスに言う。


「マリオン?何処から?」

「お城の中だよ」


この言葉に常継が「何?まさか御代の奴…」と言いながら1人で小屋の外に駆け出すとキヨロス達は後を追う。


城の門番も城に入っていて不在でキヨロス達は怪しまれることも呼び止められる事もない。

悲鳴の方角に走ると使用人が血だらけで倒れている。


「くそっ、おい!何があった!」

「て…テツイ様……苦しんで…化物…」


使用人はそう言って絶命した。

キヨロスが「ツネツギ!良くない感じだよ!早くそのテツイって人を探さないと!」と声をかけるが常継の中には嫌な予感が生まれてきていて常継の心を支配していて話どころではない。


慌てふためく常継が「くそっ!なんだってんだよ!」と言って辺りを見渡す。


「マリオン!悲鳴の中心を探すんだ!前を走って!」

「わかってる!…こっち!」

マリオンの後をついていくと血溜まりの中で目を真っ赤にしたテツイが立ち尽くしていた。


常継が「テツイ!」と呼びかけるとテツイは「あ…ぁぁ……、ツネツギ…様?遅い…ですよ…。手遅れ…、手遅れ…です」と言い、身体を震わせると「ガァァァッ!!」と叫んで真っ赤な悪魔の姿に変貌をした。


「テツイ?なんだその姿…まるで悪魔じゃないか…」と言って半分放心する常継と「あわわわわ…、テツイのご飯にイタズラしたら化物になっちゃったよ」と青くなるノレノレ。


「あれって!?」

「うん、サウスの城に居た国王と同じ悪魔だ!やるよマリオン!あの光と衝撃の攻撃に備えて!」


「壁があるからまずいと思ったら横の部屋に逃げ込む!」

「そうして!ツネツギ!戦うよ!」


「戦う?そうだ…テツイ!元に戻れ!【アーティファクト】!」

常継は青い光の剣を出すとテツイに斬りかかる。


テツイは真っ黒い血を出して苦しむがすぐに傷がなくなり常継に殴りかかってくる。


「速えっ【アーティファクト】!」

常継が剣をしまって光の盾を出すとテツイの一撃を耐える。


思わず「凄い、斬れて防げてる」と感嘆の声をあげるキヨロスに「赤だからじゃないね。本物の「勇者の腕輪」だからだね。でも太刀筋なら私のが上だよ!【アーティファクト】!」と言って赤い光の剣を出すマリオン。


マリオンは一気に距離を詰めてテツイに斬りかかる。

常継程では無いがテツイからは黒い血が吹き出した。


一撃加えたマリオンが「くそっ!まずいよ!ここって「大地の核」が弱すぎる!短期決戦じゃないと私動けなくなる!」と声をあげる。


「わかった…。切り掛かってダメなら「革命の剣」を使うよマリオン」

「了解!ツネツギ!3人で連携取るよ!声かけ忘れないで」

「おう!マリオンのアーティファクトは俺と色違いなのな!」


「私のはツネツギのレプリカ、擬似アーティファクトだよ!」

「レプリカなんてあんのか?御代にも持たせときたいな」


余裕は無いがキチンとコミュニケーションが取れる状況はありがたい。


「ツネツギ!僕が斬り込む!【アーティファクト】!」

キヨロスが振り下ろしを放つと、常継よりも深く斬り裂く事が出来たがやはりすぐに回復をする。


「コイツ…、サウスの国王より弱いくせにしぶとい?」

「短期決戦は無理そう?」

「くそっ!御代がまだ見つかってないのに…」


キヨロスはしぶとさに驚き、マリオンは活動限界を気にしていて、常継は未だ見つからない御代を心配していた。

この状況を打破するためにキヨロスが「…わかった。マリオン使うよ!」と言うとマリオンは「やりなって!」と了承をする。


「「革命の剣」頼むぞ12匹の鬼達よ!【アーティファクト】」

キヨロスが出した12本の光の剣が一気にテツイに届くとコレでもかと斬りつける。


圧倒的な攻撃力に常継が「空飛ぶ光の剣?すげぇ。あんなもんあるなら出し惜しみすんなっての」と言うとマリオンが「違うんだよ。アイツのアーティファクトはどれもアイツの魂を使うんだ。だから本当なら使わせたくないの」と注意をする。


「魂…、マジかよ」

「マジ?なにそれ?とりあえず嘘じゃないから」

そう言ったマリオンは「まあ私はそろそろお楽しみだけどね」と言って嬉しそうな声をあげる。兜のせいで顔が見えないが恐らく笑顔だろう。


「は?何言ってんだマリオン」

そんな常継の疑問はすぐに解消した。


「ちっ、しぶといんだよ!早く死ねよ!【アーティファクト】!」

突然変貌したキヨロスが悪態をつきながら悪魔に振り下ろしを放つ。

真っ黒い鮮血を撒き散らす悪魔を更に切りつけながら「おい!ツネツギ!マリオン!参加しろ!弱らせて殺すぞ!」と言うキヨロス。


「…なにあれ?」

「格好いいでしょ?戦いが長引くと出てくるの」

そう言いながら再度攻撃を始める常継とマリオン。


縦横無尽に悪魔を斬り裂くと1箇所、左胸が異常に硬い事に気づく。

「「龍の顎」?胸に着くタイプか?一斉攻撃!」

キヨロスの光の剣による一斉攻撃であっという間に胸の硬い箇所を破壊するとテツイは悪魔の姿から人間の姿に戻り死んだ。


倒れたテツイの横で佇んで「…何だったんだよ、テツイには何があったんだ?」と言う常継にマリオンが「ツネツギ、ノレノレ居ないけど逃げたの?」と聞く。


常継が「何!?あの野郎」と怒っていると大泣きのノレノレが走ってきて「薬!取りに行ってたら血の海でミシロが!」と言う。


血相を変えた常継が医師のいる部屋まで走ると部屋はノレノレの言う通り血の海で、医者や兵士と一緒に御代は死んでいた。


「御代!?」


常継が駆け寄って何度も御代の名を呼んで泣いている中、まだ息のあった兵士にキヨロスが話を聞くと、テツイが苦しんでいて御代が肩を貸して連れてきたと言う。

そして突然苦しまなくなったテツイが看護師に手を突き立てた後は流れ作業のように次々と手を突き立てたと言う話だった。


そこに「あらあら、大惨事ねぇ」と入ってきたメイド服の女が何も出来ずに立っているノレノレを見て「あらら、こっちは大失敗ね」と言った。

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