第5話 イーストガーデン01。

東の地、イーストガーデンは過去に[大破壊]と呼ばれるアーティファクトの暴走で国を大きく消失する。その結果、大地の核が満足に機能せずに大地は弱っていた。

アーティファクトの暴走で起きた大破壊からアーティファクト否定派ばかりのイーストの民達はアーティファクトをアーティファクト「迷宮の入り口」で作った[奈落]と呼ばれるダンジョンに捨てる事にする。


だが痩せ細る大地、育たぬ作物。

その中で他のガーデンからの侵略に備えた国王達はイーストガーデンに保管されているS級アーティファクト「勇者の腕輪」を使い勇者召喚を行った。

これにより東の地に勇者として日本という地から伊加利常継と伊加利御代が召喚されてしまう。


「勇者の腕輪」は左右一対のアーティファクト。

どちらが勇者か分からぬまま迎えられた常継と御代は出された食事に毒が盛られていて、先に食べた御代が毒に晒された。


弱った大地、不要論のままに手放したアーティファクト。

解毒のアーティファクトも満足に持たぬイーストでは薬が頼りだが、手持ちの解毒薬ではどうにもならなかった。

常継は唯一の解毒方法として奈落に遺棄された解毒のアーティファクトを探す冒険に出ることになる。

だが奇しくも常継の目的とイーストの目的は同じ奈落の攻略にあった。


奈落の最下層、地下30階に遺棄した「創世の光」。このアーティファクトが大破壊を引き起こしたアーティファクトだったがイーストは再びその力を欲し求めた。



常継の辛い戦いが始まる。

日本生まれ日本育ちの常継にはファンタジーの中だけで馴染みのある異世界召喚。


いきなり呼ばれて今日から勇者と言われても力が備わる訳では無い。

かろうじてS級アーティファクトの「勇者の腕輪」から出る光の剣と光の盾のお陰で他の冒険者が苦戦する大きな鬼の攻撃にもビクともせず、屈強な男の両手剣が切り裂けない蜥蜴の化物をいとも容易く斬り裂いた。


だが常継には剣の心得も無ければ命の取り合いの経験もない。


巨大な蟷螂との戦闘で腕を十針縫う大怪我をした時も回復のアーティファクトは無く、日本からすれば拙い外科治療で傷を縫われた。

そして弱った大地の核から作られた回復の擬似アーティファクトを手に入れたが「勇者の腕輪」の問題点、他のアーティファクトの使用を認めないと言うものに触れて常継は街に戻る度にお世話人テツイの姉のナオイに回復を頼んだ。


テツイは「昔はアーティファクトを使えたが今は使えないんです」と情けなく笑う。

常継はそのことに憤慨したが、追求する暇はないと寝食を惜しんで奈落に突入していく。


そして地下15階で運命の出会いを果たす。

巨大な水槽に居た2人の少女、青い髪のノレルと赤い髪のルノレ。

2人の話は要領を得ないがとりあえず地下20階に用がある。

そしてここまで来られた常継に助けて欲しいと言うものだった。

ノレルとルノレはアーティファクト使いとして実力があるから奈落のアタックを任せて欲しいと言う。

ノレルは攻撃、ルノレは回復や補助に長けているといい、常継は解毒ができるのかを聞くと、ルノレは得意だと言う。


常継は妹の解毒をしてくれれば何でもすると言い、地上に連れて帰り妹の解毒を済ませた。


常継は助かった妹の御代に泣いて抱きつく。

御代は久しぶりに見て傷だらけになっていた兄に感謝を告げる。


常継は多分地下30階で「創世の光」を手に入れれば日本に帰れるはずだから待つように御代に言い、ノレルとルノレを連れて約束の地下20階を目指す。

1人から3人になった旅路は明るいものになる。


1人で取り憑かれたように解毒のアーティファクトを探しながら「創世の光」を求めた日が嘘のようだった。


まずは多少の怪我もルノレが居れば何の問題もない。

そしてノレルの攻撃力は圧倒的で、大群との戦闘では常継は足元にも及ばなかった。


地下20階には15階にあったような部屋があった。

そこに辿り着いた時、ノレルとルノレは不安を口にしたが元々の予定だからと言ってテーブルの上に置かれた宝石を手に取ると手を繋いで【アーティファクト】と唱える。


眩い光の後、ノレルとルノレは消えて、2人のいた場所にはノレノレと名乗る灰色の髪色の少女が居た。

ノレノレは「失敗だったかー」と笑い飛ばすと常継の旅に同行すると言った。


だがすぐにとんでもない事に気付く。

ノレノレはなにも出来なかった。

ノレルの使った攻撃のアーティファクトもルノレの使った補助のアーティファクトも使えなかった。


ただの話し相手。

そして知り合ってしまったからこそ守らねばならないお荷物。

それがノレノレだった。


だが常継は諦めなかった。

妹の御代を日本に返す為に死にものぐるいで地下30階を目指す。

地下30階にある「創世の光」を手に入れることこそが自分達を日本に返す存在だと信じて…。


一歩、また一歩前に進みようやく25階を越えた時、事件は起きた。

体感で何時かわかるようになった常継とノレノレは夜を感じて奈落を後にする。

正直上り下りだけでも発生してしまうタイムロスが歯痒い。


いつ頃からか、奈落の出入り口に1組の男女が奈落に入りたいと言って入れない事に苛立っていた。


常継は勇者として簡単に入れるが他の冒険者は申請を出しても1ヶ月から待たされるらしい。


この日はごねる少女を見てノレノレが「今日もやっているねー」と感想を言ってしまう。

大概その一言はトラブルの種になる。


案の定、濃紺の鎧姿の少女がノレノレに因縁をつけてきた。仕方なく常継が仲裁に入り、相手も少女ではなく少年が仲裁に入る。

聞くと少女の為に特別なアーティファクトを探す少年と、少年のアーティファクトを成長させる為の旅をしている少女だった。


少年と少女は南のサウスガーデンから来た子供で名前をキヨロスとマリオンと言った。

常継も別の世界から来て帰る方法を探している伊加利常継と奈落で保護をしたまま仲間になったノレノレだと紹介をする。


常継は奈落の魔物は凶悪で子供が相手できるものでは無いと言うのだがマリオンは逆にキヨロスが苦戦する魔物を見てみたいと言う始末で腕に自信があることがわかる。


常継はそれならと奈落探索のチームにならないかと誘い、常継とチームを組むと奈落に入れると言うことでキヨロス達もふたつ返事をした。

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