第2話 サウスガーデン02。
ペック爺さんは「今回も早いねぇ」と笑いながら僕を出迎えてくれる。
僕はさっさと村長の家ごと制御球を破壊すると、僕が持ち込んだ制御球を持って村の入り口に亡霊騎士を呼び出して無力化をする。
付き添ってくれたリーンとカムカ。
カムカが亡霊騎士をペック爺さんの家に連れて行った。
ここであまりにもハイペースな僕にリーン達が怒った。
「キョロ?まだフィルさんも起きてないの。何焦ってるの?」
「焦ると言うか早く完全解決をしてリーンに魂を返したいんだよ」
僕はとにかく力を使うたびにリーンの魂も減っていくと聞いて気が気ではない。
だからこそ1秒でも早く完全解決がしたい。
そんな僕の顔をジッとみたリーンは「私はいいの。無理しないで」と言う。
リーンにそう言われて僕は何も言えずにペック爺さんの家に戻る事になる。
家では既に目覚めていたマリオンがマリーに回復の擬似アーティファクトを使っていた。
僕と目が合ったマリオンは「おはよー」と声をかけてくる。
僕が「おはようマリオン」と返すとマリオンは「どしたの?変な顔してるよ?」と聞いてくる。
「うん。早く倒しに行きたいんだよ」
「バカ、お姉ちゃんもマリーも寝てるんだよ?待ちなって。それに今のうちに誰が魂を共有するか決めなよ。その子、リーンだって2度の戦闘に耐えられるかわからないよ?」
確かにそうだと思った僕はリーンを見ると「いいの。死んでも2人一緒なら悪くないよ?」と言ってくれる。
でもやはり僕は誰にも死んで欲しくない。
返事に困っているとマリオンが「とりあえずマリーの方はもうすぐ目処がつくから待ってなよ」と言ってきた。
僕は「…うん」と言ってマリーの復調を待つ事にした。
マリーの目処が立つとマリオンは一人で器用に鎧を纏ってペック爺さんの擬似アーティファクト置き場から回復の擬似アーティファクトを追加で取り出すと僕の前に来る。
「マリオン?」
「さあ、お姉ちゃんも起きたから話そうよ」
「え?」と僕がベッドのある部屋を見るとそこにはフィルさんも居た。
フィルさんは目覚めて四の村、しかもマリオンのベッドで眠っていた事に驚いて照れていた。
そんなフィルさんが来たところでマリオンが僕を見て「アンタは誰にも死んで欲しくないから一人で戦いたい」と確認するように言う。
僕が「うん」と言って頷くとフィルさん達を見て「お姉ちゃん達はアンタの魂が残りわずかだから「誓いの指輪」で魂の消費を手伝いたい」と聞く。
「うん」
「そうよ」
「一人で死ぬなんてダメだよ」
リーンもフィルさんもジチさんも魂の消費を気にしない様子で言ってくれるが僕は気が重くなってしまう。
マリオンはリーン達の言葉には返事をしないで「ねぇお爺ちゃん」と言ってペック爺さんを見る。ペック爺さんは「なんだいマリオン」と聞き返す。
「私って壊れても「記憶の証」があれば助かるよね?」
「え?まあ理屈はそうだけど…どうしたんだい?」
「簡単だよ。私が「誓いの指輪」をつけるよ」
「え!?マリオン?」
「なんで!?」
「マリオンちゃん!?」
「なんでさ?」
僕を筆頭にリーンもフィルさんもジチさんも驚きを口にする。
ガミガミ爺さんとマリーはなんとなくこの展開が読めていたのか呆れた顔でマリオンを見ている。
「だってこの身体がダメになっても「記憶の証」が残っていれば私は蘇る。だから魂を共有しても何とでもなる。私の魂は身体に宿るなら身体を交換すればいい。私とお爺ちゃんだけのズルだけど折角だから使おうよ」
僕達はマリオンの提案に何も言えない。
人道を無視すれば確かに1番の手だけどそれはマリーの為にペック爺さんがマリオンを使い潰そうとしたのと変わらない。
僕は返事に困るとマリオンが「お人好しだなぁ、良いんだって。私の命をアンタに使う。アンタは私の為にあの格好いい顔を見せながら解脱の日を探すんだよ」と笑いかける。
そのまま話は平行線で結局最後はマリオンが「おーい、見てるんでしょ?来てよ」と言って神の使いを呼び出して自身を売り込む。
神の使い達が可能性に賭ける話になってしまうが確実だと言った事でリーンが肩代わりしてくれていた分の魂の消費と「誓いの指輪」を受け取った。
リーンは釈然としない顔をしていたがガミガミ爺さんとカムカに「小僧が存分に戦う為だから我慢してやんな」「さっきまでキヨロスが焦っていたからリーンちゃんとは心配なんだよ」と言われて引き下がってくれた。
当のマリオンは何が嬉しいのか「にひひ、左手の薬指にしようか?」と僕に聞いてくる。
僕はその顔に「本当に僕の為につけてくれたの?」と聞いてしまった。
その横でフィルさん達が「くっ…、ズルすぎる」「無限提供とか酷いよね」「本当だよ」と言っている中、マリオンは左手だけ鎧を外すと指輪をつけて「【アーティファクト】、これでガンガン戦えるからねー」と言って笑った。
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