11日目 逆クレーン解体式タイムマシンスキーム

 タイムマシンといえば、船のような形で人が移動するイメージが多いが、2023年に完成されたタイムマシンはパソコンの見た目だった。というのも、最初に作られたタイムマシンは、未来の情報を2進法の信号で読み取るだけだったからだ。

 作られたタイムマシンは、その方式から「未来予知式」と呼ばれた。仕組みを話すためには、我々が実在している空間とは異なる異空間の発見について話をしないといけない。

 その空間は一般的な常識は全く通じない場所で、最大の特徴として時の流れが存在していない。タイムマシンは、この異空間の仕組みを使っているのだが、実際の仕組みは非常に難解である。

 簡単に説明しようとした時には、よく定点カメラのイメージで説明される。そのカメラには時間の指定機能があって、過去も未来も自由に指定できるのだ。しかし、そこで指定した時間にカメラの前に物を置くことが出来るのは、その時間にいる人だけである。私たちは明日を見ることができるようになり、明日の私がそのカメラが写す場所に天気の情報を書いておけば、今日の私も情報を観測することが出来る。

 では、そこに株価の情報を書いておけば、過去の私たちは大儲けできるか、といえば必ずしもそうではない。現実には、“未来の株価の情報を見た世界の株価”が、値をつけていく。「タイムマシンというよりも、実際には未来予知に近い仕組み」と言われるのはそういう訳だった。

 少しSFに詳しい人であれば、タイムパラドクスが気になるだろう。しかし、観測した未来の情報は同じ時間になっても上書きできない。最初に株価を書いた人、というのは存在するのだろうか。今のところ言われている解釈では「あり得た可能性が存在しているだけ」なのだそうだ。


 前提が長くなってしまったが、それではここから人類の科学を飛躍的に進化させた「逆クレーン解体式タイムマシンスキーム」に説明したいと思う。

 ビルを作り終えたクレーンは、小さいクレーンで地上に降ろされていく。その仕組みを逆にしたような仕組みで、未来からの情報を徐々に多くしていく仕組みである。

 タイムマシンで、まずはタイムマシンの能力を向上させるための情報を手に入れる。その情報を元にタイムマシンの能力を向上させる。すると、この時点で新しい「タイムマシンの能力向上した未来」となる。そして能力を向上させたタイムマシンで、さらに進化の為の情報を得る、というわけである。

 このように順番に技術を向上させる仕組みが必要なのは、機械を作るための原料を未来から送ることはできないせいだった。タイムマシンの仕組み上、「未来から物が送られてきた」わけではなく「未来予知を元に作ってみたら、偶然意味ある物が出来上がった」ということになるらしい。

 この仕組みを繰り返し、だんだんと規模を拡大していく。今はまだ小規模な機械を作れるようになった所だ。これを作るところまで、百年以上先の未来から、百回以上情報をもらっているので、単純に考えれば一万年分時間を圧縮しているわけである。

 ここからさらに別の機械を作り、その機械から、さらに大型の機械を作る機械を作っていく。それを進めれば、さらに未来の技術を手に入れることが出来る。

 この計画の完了は、“ヒューマンプリンター”の完成まで、とされている。そこまで作り上げられれば、未来の人を過去にコピーすることが出来るようになる。

そこまでいけば、もともとのイメージに近い、タイムマシンに近くなるだろう。

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