第15廻
「へー。綾ってそんなに頭いいんだー」
「えへへ。家でやることが勉強と読書しかないからね」
昼の休憩時間、2人は一緒の机で食事をしながら会話に花を咲かせていた。
廻と綾さんが友達になって数日経ったが、今の所問題は無いように思える。
初対面の時、廻は不審者扱いされてもおかしくなかったが、その後なんとか事なきを得たようだ。
「でもだいちも頭いいんだよー?」
「えっ。そうなの藤原君?」
「…あのさぁ。なんで急に俺が入ってくるんだ?」
さも友人同士かのように見えるが、俺と綾さんは赤の他人のはずだ。俺が綾さんと喋ったのは初対面の時だけであり、その時も会話というよりはコチラが一方的に話しただけである。
だから何故綾さんの目が、俺に興味を持っているのか疑問だ。ほぼ初対面同士のようなものなのに、綾さんの方はすっかり友達の距離感で話をしてくるのだ。
「あっ。ごめんなさい...迷惑でしたよね。すいません...」
「あー!だいちが綾を悲しませたー!」
「え、違っ、そういうわけじゃ」
言い方がまずかったのか綾さんは少し悲しそうに俯いてしまった。その姿に心が痛み、どうにかフォローしようとする。
「えっと。さっきまで2人で会話してたから、なんで俺に話が振られたのかなって思っただけだから」
「「え?」」
「え?」
何故か困惑する2人につられて俺も困惑する。すると何かを確認するように綾さんが質問をしてきた。
「私たち、友達ですよね?」
言っていることがよくわからなかった。頭がモヤモヤして胸が苦しくなり、目の上が熱くなったりとやけに体の様子がおかしい。
あまりにも唐突な発言に固まる俺を見て、廻の方は察したらしい。
「あっ!綾!それは地雷だ!」
「えっ!?」
急に何を言われたのか、戸惑う綾さんに廻は説明した。
「こいつほとんど友達がいなかったから、友達って感覚に慣れてないんだ!」
「...うるせえよ」
誤魔化そうにもあまりの感動で涙ぐんでしまい、誤魔化せそうにない。
そんな俺を見て廻は何を思ったのかとんでもない発言をかました。
「え、だいちガチで泣いてんの?キッショ」
あまりにストレートな暴言に、感動が消え去った。代わりに沸いたのはこれ以上ない怒り。
俺は廻の手首を掴むと、捻るようにして回した。
「ちょっ?!痛いっ!痛いよっ!?」
一人で騒ぐ廻を無視して、なんとか手首を一蹴させようと奮闘すると、廻の声は一層悲惨なものへと変わった。
耐えかねた廻は、完全に空気になっていた一筋の希望、綾さんに助けを求めた。
「綾っ!助けて!私死んじゃう!」
さすがに綾さんから止められると俺も続けにくい。そのことを理解していたのか、廻はニヤッと笑いながら勝ちを確信した。
だが綾さんはご飯を食べながら、淡々と放った。
「今のは流石に廻ちゃんが悪いかな?」
瞬間、絶望の表情になる廻を見て、俺は笑いを堪えながら勝ちを確信した笑みを浮かべる。
「だ、そうだ。何か遺言はあるか?」
「...優しくお願い、ね?」
掴まれてない方の腕でピースサインをしながらウィンクする廻に構わず、本気で手首を回した。
後日、風の噂で聞いたが廻の絶叫は、学校中に響き渡ったらしい。
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