第14廻

「はぁ〜〜〜〜」


 俺は自分の席に座ると、すぐに机に突っ伏し、大きくため息をついた。

 朝から鬼ごっこをしてきた訳だから、疲労はかなり溜まっている。これもすべて廻のせいだ。して、とうの本人はと言うと。


「やぁやぁ、おはよう。そこの可愛いお嬢さん。失礼だけど名前を聞いてもいいかな?」

「ふぇっ?わ、私ですか?」


 ナンパ...なのだろうか?何やら自分の隣の生徒に話しかけている。黒髪のロングヘアーで、とても誠実な印象を受ける子だ。正直言って結構可愛いと思う。

 まさか廻のヤツそっちの気もあるのかと考えていた。が、そんな思考を吹き飛ばす衝撃が次の瞬間、俺に襲いかかった。


「さ、災難さいなんあやと言いますっ!」

「はい?」

「えっ?ですからあの、災難綾と言います」

「え?さいなん?災いの?」

「えっ、はい」


 いや待って?そんな苗字ある?と廻は思っているだろう。俺も思っている。というか昨日、自己紹介の時に至ってはクラス全員が同じ反応をしていた筈だ(俺と廻は席を外していた)。


「あっうん。えーと、とりあえずアヤちゃんと呼んでもいいかな?」

「?!はっ、はい!!お願いします!!!」


 何故か嬉しそうに答える綾さんを、不思議に思いながら眺めていると、廻がなぜか悲しげな顔をしていることに気がついた。それは綾さんにもわかったようだ。


「あっあの。大丈夫、ですか?や、ややっぱり私と友達なんてイヤですよね…ごめんなさい。無理させてしまって……」


 そう言うと綾さんは俯いて、そのままどこかへ去ろうとしていた。


「え?」


 そして、その手を掴み離さないように握ると廻は悲しさのカケラもない顔で……

 


「綾っ!私の信者にならない???」

「……はい?」


 マズイ。


「あっそうだ。私の名前は芥神廻!今日から君のかm___ムゴオ?!」


 咄嗟に口をガムテープで塞いだ俺のファインプレーを褒めてほしい。

 

「アハハハハ!ごめーん、こいつ時々変なこと言う癖があってさ!?今のも多分適当なこと言っただけだからキニシナイデネ??!!それじゃーまたー!!!」


 廻の体をガムテープでぐるぐる巻きにし、抱えると俺は全速力で屋上まだダッシュした。

 これが後に爛星の七不思議の一つとなるガムテープ男とミイラ女の誕生日だとは、誰も知らない。




「芥…神」


 少女は1人椅子に座り考え込んでいた。先程友達…になったかは知らないが、とにかく友達(仮)になってくれた少女について。


「紅い髪…」


 おそらく彼女のことは知っている。

 だが確証が無いためわからない。

 けれど彼女には絶対に突き止めなければならない因縁があった。








 

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